春21号

恋は光の春21号のレビュー・感想・評価

恋は光(2022年製作の映画)
4.1
この世は一つの愛の形だけではない

恋愛映画と言う一大ジャンル化したものを僕は好きではなかった。
ポスターにデカデカと"男女2組"が制服を着て並んでるやつ
一時期、と言うか今も映画館に行けば必ず一枚は飾られてるぐらい慢性的に作られているジャンルだけど何故だか好きになれなかった。
でも不思議なのが恋愛ドラマは割と好んでみてたんだよな
海外の恋愛映画とかも観てた気がするしそれこそ変化球かもしれないがモテキとかは結構好きなんだよ

で、たどり着いた答えがテメー勝手な物語に辟易するから僕は日本の恋愛映画史上が受け入れられなかったと言うこと
主人公とその相手の成就にのみ物語の力学がひたすら働いていてそれ以外は添え物でしかないという構図をひたすら見せつけられる。
こんなのって本当にない
人の惚気話を聞く気になれないのはその話の中に自分の意見を挟み用がないから
つまり2人しかいない話なんて聞く気になんてならないんですね
唯一それに耳を傾けられるのはそこに憧れを抱ける人だけだと思います。

で、本作はどうだったかと言うと
そこが明確にクリアされていました。
図らずも3人の女性が主人公を取り合うと言う構図ですが幼馴染と結局くっつく為に他の2人が存在する。なんてことにはなっていない、それはこの物語がそれぞれの愛について真剣にそれぞれが研究すると言う可笑しな話になっているからです。
これつまりお互いの事を思いやりもっと言うとお互いが大前提いないと成立しない話になっているのです。
その3人が観ている人たちを喜ばせる為だけに争うなんて事をしないのも良い
登場人物全員を尊重するだけで物語はこんなにも豊かになるのかと思わされる。
恋敵という明確な悪を作り続けてきたジャンルに対して馬場ふみかの役どころでもって意趣返ししている様にも思える。
ラストシーン、主人公が告白してからの面白シーン、あれが物語っている世界は2人だけのものじゃないというメッセージが素晴らしい、とにかく素晴らしい

地方ロケや若手俳優、ハイキーな映像など
他の日本の恋愛映画とルックは似ているのに目指す地平は全然別のところにある。
恋している人は主人公達だけじゃなく全員輝いている。そう言えるだけでこの映画は人間讃歌、最高でした。
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