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生れてはみたけれどのkogureawesomeのレビュー・感想・評価

生れてはみたけれど(1932年製作の映画)
5.0
サイレント映画。
子供が主役の映画。

印象的な場面がいくつもあるが

自分の父親が一番偉いのだと思っていた子供達が上司にペコペコしている父親の姿を見てしまい「お父ちゃんは僕たちに偉くなれ偉くなれと言ってる癖に自分は全然偉くないじゃないか」と文句を言う。何しろ自分の子分の父親がその上司なのだ。
「太郎ちゃんのお父ちゃんは重役だからだよ」と大人の事情を説明するも、「お父ちゃんだって重役になればいいじゃないか」と子供は怒って言い返す。
「太郎ちゃんのお父さんから月給を貰っているんだよ」
「月給なんか貰わなきゃいいじゃないか」
このシーンのやりとりは「ウッ」となる。
滑稽さと悲痛さがあって、答えの出ない質問をされている気がする。

他にも

「学校は面白いかい?」とお父さんが聞くと
「学校に行くのも面白いし
帰って来るのも面白いけど・・・その間がどうも気にいらないね」と子供が答える。

ふざけたポーズとか、
兄弟が同じ動きを繰り返すところや

「オナカヲコワシテヰマスカラ ナニモヤラナイデ下サイ」という紙を背中に貼られている子供がいたり、

電信柱ばかり目立つ東京の郊外や、
登場人物達の背景を走る一両の電車、

タイトルやクレジット、字幕タイトルのフォントなどが素敵だった。

アキ・カウリスマキは死んだら墓石にこの映画のタイトルを刻むと言っていた。
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