似太郎

生れてはみたけれどの似太郎のレビュー・感想・評価

生れてはみたけれど(1932年製作の映画)
4.3
小津安二郎の初期作品。戦前の暗い世相が反映してる為、貧乏臭くウジウジしているのが特徴。全編に渡って不景気感がすごく出ている。

出てくる子供と大人の対比がアイロニカルでまるで風刺喜劇(?)を観てるかのような錯覚に陥る。前作『大学は出たけれど』もそうだが、小津安二郎が描く大人や青年は本当に情けない。子供は割と可愛いのだが❓

殺風景な空き地や踏み切りなどを効果的に使ったロケーションなども冴え渡っており、さすがは世界に誇る映像作家といった感じ。

戦後になると『晩春』とか『東京物語』とか様式美に走るんだけど、この頃は結構フツーの劇映画の文体。固定アングルも少なく「小津調」が確立される前のプレ・小津安二郎映画という気もする。タイトルのまんま『大人の見る絵本』と呼ぶに相応しい庶民映画。
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