TS

ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~のTSのレビュー・感想・評価

4.5
【永遠の別れ】94点
ーーーーーーーーーーーーー
監督:信友直子
製作国:日本
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:101分
ーーーーーーーーーーーーー
 これを観て泣かない人はいるのだろうか。と言いたい程涙腺崩壊の映画だと思いました。なんというか、特別なことはなく、本当に人の人生をドキュメンタリーとして収めているだけ。悪くいうとありきたりであるのですが、だからこそ誰もが通るであろう両親の行末に共感度が高くなります。ほとんどの人は自分の両親をこれらに投影するでしょう。こういうのを観たら、これからも親を大事にしていかないと、はたまたもっと親と話しておけばよかった、などと人によって捉え方は千差万別だと思います。

 前作が撮影されて間もない頃、前作の上映が始まる前に信友さんのお母さんが救急搬送されてしまいます。結果は脳梗塞。ここからお母さんは病院での生活を余儀なくされます。特別なことはないと言いましたが、まずこれらの状況を撮影している信友さんが凄いです。一歩間違えると不謹慎と言われない状況でありますが、『エンディングノート』のように、普通撮らないことを撮るのが単純に凄いのです。こういう行く末というものは、誰もが経験している、もしくはこれからしていくと思いますが、果たしてこのあたりのものを映像で収めようとする人はどれくらいいるのでしょうか。私情ですが、自分自身もよく祖父母をビデオカメラで撮影はしていましたが、祖父が緊急搬送されて危篤状態だった時はとてもじゃないですがカメラを回す気になれませんでした。その後残念ながら祖父は亡くなってしまい、家族葬だったので落ち着いた時は少しカメラを回せましたがそれくらい。信友さんはいろんな思いの中でこれらを撮影したのだと思います。両親のため、自分のため、そして前作が出ている以上、自分みたいに続編を楽しみにしている人々がいるため、撮影し続けます。

 恐らく、撮影の時は感情をかなり殺したことでしょう。自分の母がどんどん衰弱していく姿を見て動揺しないわけがありません。我々としても、やはり前作からの今作という二段構えのため余計に悲しくなります。あれ程生き生きしていたお母さんが、まともに会話できなくなるなんて。どれだけ元気な人でも病には勝てない。それを刻一刻と撮影しているためどんな映像よりも説得力があります。

 最後は涙なしには見られないでしょう。お母さんを支えてきた信友さんも然り、半世紀以上にわたり一緒に過ごしてきたお父さんの気持ちが高ぶる号泣シーンです。このあたりも、親族を亡くされた方からすると当たり前の反応だろうと思われるでしょう。しかし、それをしっかりと撮っていることに感服します。人の一生はかくも儚い。だからこそ1秒1秒を大事にしなければ、と強く思いました。そして全てを身終えてからサブタイトルを確認するとまた泣けてくる。やはり我が家が一番なんですよね。。

 お父さんが主人公かな、というくらいお父さんが映されています。100歳を過ぎても逞しく生きるお父さん。人間の鑑だと思いました。そして、不謹慎ではありますが、元気と言ってもこのお父さんも先は長くないでしょう。もし信友さんが、そのお父さんの最期まで撮影し、それを三作目として世にだしてきたら、このドキュメンタリー映画は感謝すべき両親の行く末を撮り続けた究極の三部作として語り継がれることでしょう。無論、お父さんには1日も長く生き続けてほしいですが。自分の両親も長生きしますように。
TS

TS