キヲシ

ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~のキヲシのレビュー・感想・評価

3.5
監督信友直子自身の闘病、母が正月に口にする「ぼけますからよろしくお願いします」の名台詞、いつも温和な父の激昂する場面…前作をなぞりつつ、母の脳梗塞による入院で新たな日常が始まる。ほぼ寝たきりで意識もおぼろになった母が転院の途中、自宅に戻るところはこちらもこみ上げてくるものがある。介護者に抱きかかえられ、狭い台所脇のいつものテーブルのいつもの椅子に腰掛けたときの泣き笑いのような表情。父は毎日見舞いに訪れ、声をかけながら母の手を握る。娘であり監督であるその指先が真っ白な髪を優しく撫でる。美容院で整えた髪、溢れんばかりに注がれたコーヒー、雑然と積み重ねられた本の束、洗面器に浸かる洗濯物、肉屋と魚屋と八百屋の並ぶ商店街!、ココスのハンバーグ。こちらがあれやこれやと重ね合わせてしまい揺さぶられる。
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