たむ

気狂いピエロ 2Kレストア版のたむのレビュー・感想・評価

気狂いピエロ 2Kレストア版(1965年製作の映画)
4.5
私はこの映画がゴダール監督の最高傑作だと思っています。
あとは『女は女である』と『はなればなれに』は観やすいゴダール監督でベスト3かと。
それ以外は超越しているというか、映画表現を突き詰めすぎて、娯楽映画ではない普通ではない作品になっていくので、本作がギリギリ最後の商業映画として観られているのではないかと思います。
それでもかなりのむちゃがありますが…。

フランソワ・トリュフォー監督の『突然炎のごとく』からインスパイアされたという本作は、ゴダール監督とジャン・ポール・ベルモンドさんが最後に組んだ作品でもあり、アンナ・カリーナさんの神がかった魅力でみせてくれる作品です。
犯罪映画で、ラブストーリーでもあるわけですが、結局何が彼を狂わせたのか、が興味の対象となっていきます。
あいかわらず前後が描写されず、状況証拠と感情で進んでいきます。
そこが本作の面白さであり、わけのわからなさでもあり…。

引用も多く、わかる人にしかわからない突き放した感じも、他人の感情や気持ちはわからない、自分自身ですら、突発的な行動をしたりしてよくわからない。
サミュエル・フラー監督が劇中で言う言葉を借りれば、映画はエモーション。
このエモーションの曖昧で、不可解で、分かり合えない感覚。
わからない事が、面白さとして感じられるところが、ギリギリの映画として、映画史上の傑作として君臨しているのではないかと思いますね。
たむ

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