アニマル泉

気狂いピエロ 2Kレストア版のアニマル泉のレビュー・感想・評価

気狂いピエロ 2Kレストア版(1965年製作の映画)
5.0
ゴダールの全力疾走!逃げる!疾走する!追いかけても追いかけても絶対に追いつかない。立ち止まることも振り返ることも許されず、ひたすら逃げる、どんどんスピードを上げて。その絶望が胸に刺さる。そして疾走の果てに永遠を掴む。決して捕まえられない一瞬が永遠になる。真実になる。フラーのあまりに有名な「映画は戦場だ。すべてだ。つまりは感動だ。」のセリフどおりに愛、裏切り、死、全てが炸裂する。映画史が生んだ最高のパートナーであるベルモンドとカリーナが鮮烈に輝く。ラウール・クタールのトリコロールの映像が強烈。残念ながら音が悪かった。原盤トラックが残存してないとのこと。永遠の青春に到達した奇蹟の金字塔。

2016.8.3 k's cinema
再見。
クライマックスの犯行場面の鮮やかさ!自動車が生き物のように躍動する。このテンポはホークスの「三つ数えろ」だ。亡命王女やメロディに取り憑かれた漫才師はフラーの「ショック集団」の登場人物みたいだ。破滅へ一直線、死を予感するベルモンドと、どんな手を使っても生き残ろうとあがくカリーナの逃避行。それを鮮烈で絶望的な画面に、真逆の希望的な二人のオフサウンドの会話をかぶせて、なんともスリリングで芳醇で重層的な世界を構築したことが本作の最大の魅力だと思う。誰も真似できない絶対的なフィルムだ。アンナ・カリーナが圧倒的に妖しく輝いている。「私の運命線」の赤いワンピースと青い海の至福の場面!映画の神様が祝福している。

2016.8.19 K's cinema
再見
破滅への一直線がどうしてこんなに生命感に溢れて瑞々しいのだろう。二度とない青春が、そして映画の青春が輝いている。最初のフランクを殴打する長回し、クライマックスのホークスやフォードのようなあっという間の犯行、どちらの捌きも素晴らしい。「見てごらん。海だ、波だ、空だ。人生は悲しくも美しい」「人々の間には空間と音と色彩がある。そこへ到着するのだ」「彼女を胸にいだき泣き出した。それが最初の唯一の夢だった」あらためてアンナ・カリーナが圧巻。妖しく、美しく、怖しい。

2022.5.11 ビューマントラスト有楽町
再見
2Kレストア版で色彩が鮮やかだ。赤、青、黄のトリコロールと水色、緑、ピンクのパステル色が息を呑む美しさである。木の影や葉なども高細精に映える。音は残念ながらマスターが無いらしくかつての版と変わらなかった。
本作は巨大な塊だ。映像、テキスト、音が見事にコラージュして巨大なエモーションとなっている。フィルム・ノワール、メロドラマ、ミュージカル、戦争映画、あらゆるジャンルがごった煮となった巨大な塊だ。つまりはゴダールとっての映画=人生そのものである。
田舎道に車が止まる、これがゴダールっぽい。そして爆発。ゴダールの自動車は艶かしく凶暴だ。ラストの爆発は普通ならばロングショットになって一拍の間があって爆発となるところだが、ゴダールは食い込む、せわしない。導火線に火がつき、慌てて消そうとすると食い込んで呆気なく爆発する。この早いテンポもゴダールならではだ。
アンナ・カリーナの躍動感が忘れ難い。川を進む、海に去る、舟の滑走も美しい。字幕の訳が判りやすかった。
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