とむ

サバカン SABAKANのとむのレビュー・感想・評価

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)
3.0
個人的ド傑作「ガチ星」の脚本家の初監督作品っていうのと、
僕が見てる「ゴリパラ見聞録」っていう九州版水曜どうでしょうみたいな番組で宣伝してたということもあり、ちょっとした期待を胸に劇場に足を運びました。


結論から言うと、予告編や作品のイメージから連想される程度の面白さはあるかもしれないけど、
前述した「ガチ星」の脚本家っていうバイアスを意識してしまうとどうしても期待はずれだったかなーという印象でした。


まず、ひさちゃんがたけちゃんと一緒にイルカを見に行くって言う本作の肝になるプロットですが、
最初はクラスのいじめられっ子?以上の立ち位置を示していないたけちゃんの言うことを素直に聞いちゃう行動原理がよくわかんないんですよね。

クラスメートと話してる時のひさちゃんって割と自分の意見言えてるし、気弱な感じの子に見えないからちょっと説得力がなかった。

しかもたけちゃんって最初の方結構嫌なヤツじゃないですか。
結構自分勝手な物言いしてくるし、
自転車壊したのに開き直ってるし、
溺れてるのに根性論振り翳してくるし。
まぁ子供らしいといえばそうなのかもしれませんが。
それに対して最初は強い意志を持って「なんでお前といかないといけんとや」とか言って突っぱねるけど、
100円のこと言われて渋々ついていく…とかだったらまだわかるんですけど。。
(もちろんひさちゃんはたけちゃんのこと見下してる訳では無いので、必要以上に突っぱねる必要はないけど)


ストーリーで言うと、
ブーメラン島目指すくだりが長すぎて「その後」にたけちゃんとの親睦を深める描写が中途半端に感じました。
スタンドバイミーみたいな一本道のロードムービーとして振り切るか、
イルカの下りはサクッと切り上げて、仲良くなって以降に不良に絡まれたりお姉さんに車乗せてもらったりみたいなシーンを振り分けた方が友情の描き方としても厚みが出たんじゃないかなぁ。

なんなら「ブーメラン島に行った日以来、彼とは特に話すこともなく卒業してしまったけど、でも自分には何故だか忘れられない記憶として残っている」くらいのストーリーの方がリアルだし面白く描けそうだなと思ったり。

これはもしかするとだけど、「サバカン」ってタイトルの肝になる例のシーンを入れたくてスタンドバイミー的な作劇からちょっと逸れちゃったんじゃないかな。。

そして持ってったロープとか、
絶対何かしらの伏線になるんだろうなーと思ったら特になんも無いんかい!
あの笑いのためだけの小道具なのかよ!特に面白くも無いし


あと、たけちゃんのお母さんがひさちゃんにチクるくだり…アレなんで言った?笑
デリカシー無さすぎん?
そのせいもあってかその後の展開に悲しさとか一切なく、この辺もなんか中途半端なんだよなー。

スーパーのパートで半額シール貼る下りとかも唐突すぎて、なんで入ってるのかよくわからず…全体的にそう言うシーン多かったですね。
何かしらのシーンカットしたのかな?


その他技術的な面に対しての苦言も少なくない。

ちょこちょこタイトルを子供が書いた文字がアニメーション的にピョコピョコ動いてるみたいな演出があったんですけど、
ノスタルジックな映像でああいうのやられるとちょっとミスマッチ感が否めなかったな〜と…教育テレビじゃ無いんだからさ。
「大人が狙った子供らしさ」って感じがしてあんまり生きてこなかったというか…
ドラマだったら全然ありなんですけどね。


あと、カット割も結構残念でしたよねぇ
冒頭の草薙くんがサバカン見て当時を振り返る下りとか、2回もヨリで見せる必要絶対ないよね。
日本映画って一時が万事説明過多なのよ。


多分この監督、カメラマンや編集等のスタッフに対しての「ディレクション」とかはしてないんじゃないかなぁ。
監督としての軸や、「ここを見せたい!」っていうこだわりがあんまり感じられなかったと言うか…
それぞれのセクションの方々にお任せしてる感をひしひしと感じました。

編集にしろ撮影にしろCGの使い方にしろ、
芸人監督の「浅草キッド」の方が断然こだわりを感じました。


子役のお芝居もなんか一貫性が無いというか、
思い切りが無いと言うか…
色々中途半端で残念な作品でしたね。


すごく嫌な言い方になりますけど、
「これまでの功績を認められた自主制作出身の監督がスカラシップで撮った挑戦作」っていう印象まんまな作品ですね。
今作に関しても前田司郎とか、廣原暁に監督させた方が良いものになったんじゃないかなぁと思ってしまいました。

まぁ、本当の意味で「挑戦作」でしょうし、
脚本家としては良いものを作る方だと思うので、今後の作品に期待したいです。
とむ

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