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サバカン SABAKANのbluebeanのレビュー・感想・評価

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)
4.0
主人公の世代設定は多少自分より上ですが、完全にはまって感情移入してしまいました。子供時代に感じた世界の広さ、日常の狭い生活範囲を抜け出す冒険感とワクワク感。子供の頃を思い出させるというレベルを越えて、当時自分が認知していた世界の見え方をもう一度体験させてくれるような映画でした。友情ものとしても一級品で最初の「またね」のシーンで思わず泣きました。

とにかく長崎のロケーションと構図が素晴らしすきました。峠からの眺望、崖沿いの道路から眺める海、夕焼けなどなど、本当に美しかったです。それらが子供の目を通すキラキラした世界を象徴しているよう。一番好きなのはラスト付近に出てくる海沿いの駅の構図です。海、山、ベンチ、電柱、電車、そして人物と、全てのものが完璧に配置され、望遠で歪みのない一枚絵はまさに芸術作品のようだと思えました。

出てくる大人たちの描かれ方も良かったです。口うるさい花親、普段だらしない父親、怖い近所のおじさんなどが、子供にとってすごく頼れるカッコ良い存在であるところがリアルでした。確かにそう見えてたな、としみじみ。大人のおねえさんと出会い、大人の女性を意識し始めるシーンも良いです。

友達と小さな冒険をする流れを含め、かなりスタンドバイミー感がありました。でもラストシーンは対照的です。スタンドバイミーのような最後を予想して見ていると、かなり肩透かしな最後で驚きました。でもその展開が決して陳腐に見えないのが素晴らしい。

自分としても意外だったのが、86年の舞台がそれほど古く感じなかったことです。もっと懐かしんでエモいと感じるかと予想していたのですが、そうでもない。なんというか日本という国の時が止まって停滞しているのでは、と考えてしまいました。100円を拾うシーンがありますが、普通だったらインフレで金額に対する印象が変わっていてもよさそうですが、大して変わってないなと感じてぞっとしました。
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