MasahideYoshida

サバカン SABAKANのMasahideYoshidaのレビュー・感想・評価

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)
3.9
2022年公開
監督 : 金沢知樹
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筆の進まない作家が、長崎での少年時代のある夏休みを共に過ごした友との思い出を本にしていくお話。

小学生って、繊細だったなあと思い出させられる物語。大人になってからの方が気にすることや相手の数が増えて、つい「子供は気楽でいいよな」と断じてしまいそうになるのだけど、それは違って。確かにシンプルな構造かもしれないけれどその分、目の前の人間にものすごく丁寧に、重大に、眼差しを向けられる、というか向けざるを得ない、そんな尊さと息苦しさを、友との距離感の描写から体感として呼び覚まされた気がします。やめればいいじゃんとか、別にたくさん友達なんか探せばいいじゃんとか、そういうことじゃないんだよね。向き合うって決めて、向き合いきる痛さや恥ずかしさや気まずさのそのさきに何がありえるかという。

静かで、ある意味ありふれていて、突飛なことは特に起こらないけれど、それが故に、自分の中にもこのお話は入っていると思わされるし、それができるのは脚本と演技がいいから。丁寧に見てほしい映画。