KnightsofOdessa

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.0
[マルチバース・オブ・ミシェル・ヨーのマルチバース・セラピー] 60点

公開直後にLetterboxdで歴代最高評価を叩き出したり(現在は7位)、A24で最大のヒット作となったり、今年の上半期の話題の中心にあった一作。本作品は原題と同じく"Everything"と"Everywhere"と"All at Once"の三部構成となっている。主人公エヴリン・ワンは様々な問題に囲まれて、それらを無視している。夫のウェイモンドは見た目も性格もナヨナヨして適当なので、彼には自分の言うことを聞かせないといけないと思っている。娘のジョイは恋人ベッキーを連れてくるが、娘がレズビアンだとバレたくないエヴリンは、ベッキーを"彼"と呼んで向き合うことを拒む。仲の悪かった父親は半分ボケていて、経営するコインランドリーは国税庁の調査を受けている。そんなドン詰まりのある日、豹変したウェイモンドが"マルチバースの使者"として登場し、謎の敵ジョブ・トゥパキとの戦いに巻き込まれていく。異世界の自分を召喚する方法として、慣例を無視する、つまり普段しないようなことをする必要があり、人のガムを食べたり、わざと紙で指を切ったりと忙しなく不自然な行動を見られるのがまず面白い。また、この世界のエヴリンは異世界自分召喚初心者なので、セオリーを無視して変な世界に行ってしまい、指がフランクフルトになったり、子供の書いた絵みたいになったり、鳥になったりとほぼギャグみたいな異世界自分にリーチしてしまうのも面白い。マルチバースによって同じ母娘を大量に登場させ一般化するという、経済的なのかその真逆なのか分からんクリシェに則っていて、そこまで新鮮味はないが、それすらも包含して押し切る勢いがある。なにせあんだけ移動した感じ出しといて、本筋のエヴリンは国税庁の建物から一歩も出てないのだから。

それにしても、トニー・レオンの役者人生を丸っと借りパクした『シャン・チー』と核は変わらないと思うんだが(ちなみに同作にもミシェル・ヨーは出演している)、そこまでグロテスクさを感じないのはなぜなんだろうか。それも勢いのおかげだろうか。
KnightsofOdessa

KnightsofOdessa