ドンキーホーグ

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのドンキーホーグのレビュー・感想・評価

4.4
ただの親子喧嘩もマルチバースで風呂敷を拡げれば、ここまで面白くなるんだなと。(結局スター・ウォーズとかもそういうことなんだろうけど)
アメリカ映画は父と子の確執を扱うことばかりで正直げんなりするし、興味も持てないのだが、本作は母子喧嘩だったのでちょっと毛色が違って楽しめた。

メインストーリーは真っ直ぐだけど、その伝え方は他に類を見ないほどユニークだった。
良いコンピュータがなかったら、こんな映画作るなんてできなかっただろうなと思う。そういう意味ではかなり現代的な映画だと思う。

アクション・SF・ヒューマンドラマ・今流行りの多様性・ブラックコメディ・下ネタ…
内容的に盛り沢山なのに、そのどれも手が抜かれていないというか、持てる全ての力を出し切って作ったのだろうなというのがひしひしと伝わってきた。(請求書の黒円から円鏡から洗濯機からベーグルへと、丸できちんと伏線を張っているのも良い)

映像と演出がとにかくすごい。スイス・アーミー・マンもすごいと思ったが、これもすごい。
難点としては、監督たちがどうしても中学生の心を捨てきれず、とんでもなく低俗な下ネタを入れてくること。スイス・アーミー・マンのときはそこに必然性のようなものを感じたが、本作に関しては脈絡なく下ネタが出てくるので、メインストーリーのノイズに感じた。人を選ぶ要因にもなると思うが、本人たちがやりたいのだから仕方がない。

個人的にはこれはクラウドアトラスでやろうとしたことのアップグレード版だと感じる。ジャコ・ヴァン・ドルマルのMr.Nobodyのような趣も感じる(あそこまでの洗練された哲学はないが)

日本に輸入されたら、ジョーカーとか半地下とかミッドサマーとかを超えるレベルでヒットすると思う。その時は劇場で見たいな。

追記:
https://youtu.be/hFFopPPrGiE
このワイヤードのインタビューによると、本作のVFXはなんと5人で作ったらしい…!
主人公がマルチバースを通過するシーンは、GoProのfootageに強い映像効果を乗せて、verse-jumpして別世界の自分と重ね合わせになるシーンは後ろからリーフブロワーを吹きながらシャッタースピードを変えたカメラで撮影しているとのこと…手作り感すごい…
元々低予算MV作成の経験が生きているとのことで、なるほどなぁと