Morohashi

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのMorohashiのレビュー・感想・評価

5.0
めちゃめちゃ面白かった!!
現実と空想の境目がわからなくなるような演出が画面と音で表現されてて、まさに最先端のカオス!こんな映像体験は初めてで、映画館で見てよかった!
アクション映画、コメディ映画、家族愛の映画として一級品!

マトリックス、パプリカ、恋する惑星、2001年宇宙の旅など、多数の映画へのオマージュがあるのがまた嬉しい。
ウェイモンドがウエストポーチつけてるのって、多分グーニーズのオマージュだと思う!


◯「できる」と「やる」は違う。「わかる」と「やる」は違う。
映画の大きなテーマは本当に多岐に渡るので、どこから見るかによってかなり違った印象の映画になる。
でも一番心に響いたのは、トゥパキの「can」の概念の話。
"can"の概念を履き違えてる。できないと思い込んでいるだけであって、してはいけないわけではない、っていう話。
イブリンはこれまで、様々なことで失敗してきた。(端から見れば失敗ではないのだけれど、本人は失敗だと思いこんできた)
そして未来もまた、失敗してもいないのに、失敗した後のことを心配して何もしなくなる始末。
現代は情報があふれているので、なんでも「できる」と思い込んでいるが、だからこそ何もしなくなる。「やったらこうなるんでしょ」っていう予測がつくからこそ、何もしなくなる。
きっと彼女はやりたいことがたくさんあったはずなのに、いろんなことを諦めてきてしまった。その結果、すごく閉鎖的な人間になってしまった。
そして今度はまさか、自分の娘が世代的にも恋愛の価値観的にも遠い存在になってしまいつつあった。
深く関わったら、また夫との関係のように失うかもしれない、っていう不安で、表面的な話しかできないイブリン。
でもやっぱり人として繋がりたいんだ、自分の娘とは繋がっていたいんだ、っていう気持ちが随所に表れていて、それがなんとも切ない。


◯黒ベーグルの謎
この映画の中で、黒ベーグルは非常に象徴的な存在として描かれている。それが具体的に何を指すのかは、ほとんど語られることがない。
でもこれも、イブリンの思考の描写と考えると説明がつく。

世の中にはたくさんのものがあるけれど、結局のところ正しいものは1つしかないという理論、それがあの黒ベーグルに集約されている。
だから「問題が起こったら相手を言い負かすことが正解なんだ」って思い込んで、それが唯一の絶対的なものだと思いこんでいる。
けれど、ウェイモンドは全く別の方法で、イブリンよりも優れた成果を挙げるようになり、それがイブリンには全く理解できないというところから、このメタユニバースの話が始まっていく。

また、黒のベーグルの図はイブリンの物事の捉え方を図にしたものである。
明るい部分を、黒いもので囲い込むことによって、自分のことを守りつつも可能性を徹底的に狭めている。
対するウェイモンドは目玉。これは黒ベーグルとは真逆の色配置で、黒いものを中心にしながらも、明るい部分がまわりにあり、常に広がりを見せる構造になっている。
これだけ価値観が多様になってきたならば、みんなの共通点を探すのではなく、むしろみんなの個性を取り入れて共通点に昇華させていくような心意気が大切だと感じた!
Morohashi

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