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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのshioのレビュー・感想・評価

4.3
「いつの時代の、どこの世界の、どこの家庭でも」

どうやったらこんな映画撮れるのか…
脚本とか絵コンテとかどう描いてあるんだろう?
その情報整理力に感服。

こちとらMarvel大好き人間なので
マルチバースという概念は理解済みだが
やたら丁寧に解説されていた。

能力のインストールはマトリックス
別ユニバースの階層との繋がり具合はインセプションを
彷彿とさせたが
能力の呼び出し方が
とんでもなくアホらしいのが良いスパイス笑
しかも「遠ければ遠い能力ほど普段の自分らしくない行動」
というのが理にかなっていた。

スイスアーミーマンの
「限られた環境で起こせる最大限の表現」と
ルッソ兄弟の
「区切られた環境を別環境に繋げていく展開力」みたいな
部分が綺麗にハマった感じ。

めちゃくちゃ壮大な話なのに
描いているのは思春期の娘と母の話。

母を苦しめんとする根源悪の正体は娘の反骨心。
そりが合わず、歯向かい、喧嘩する母と娘。
そんな「どんな世界の」「どこの家庭でも」「いつの時代も」
起こっていた事象の話。
突拍子もない話すぎて気付くのに時間かかったけど
こんなテーマをあのスケールで描こうとした
発想に脱帽。
普通に泣けます。

何の作品か忘れたが人間に反抗期がある理由を
端的に説明したセリフで妙に納得したのが
「父を超えるため」だった。
その作品では息子と父の関係性だったが
今作は娘と母親。
息子と母とか、娘と父じゃ違うんです。
母と娘だから良いんです。

自分の家族にも姉、いとこにも姉妹がいるのだが
幼少期見てきた彼女らと母親との喧嘩は
お世辞にも建設的とはいえないものがある。
お互いに一時の感情で記憶の引き出しを
開け閉めする様子を見て
いささか恐怖したものだ笑

男同士だとこうはいかない。
暴力とか威厳に頼ってしまうから。

そういった意味でこの映画は
思春期を終えたかつての娘
そんな娘を持つ母に特に見てほしいと思う。

アライグマのコックや香水、SMアイテムなど
伏線回収にも目を見張るものがあったが
特に石同士の会話シーンの
「今の大発見も後の時代の大発見が超えていく」
的な会話が
ランドリーの前で娘と話すシーンで
回収された時はすごいと思った。

今、母の厳しさを優しさと気付いた娘は
いつか自分が親になった時に
もっと大きな発見するんだろうなって
想像してました。

アクションもよかった。

RRRよろしく、人生でこんな短期間で素晴らしい肩車を2回もみることになるとは笑
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