いかえもん

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのいかえもんのレビュー・感想・評価

4.0
今日は推しの映画だから長いよー。
結構長いこと公開を待っていた作品で、最近は賞レースでかなり話題になっているのもあって期待値大分上げていきました。

うーん、作品としては賛否両論あるだろうなーと思う。いわゆるアメリカンジョークの笑いのポイントがずれてたら全然笑えないと思うし、かなり内容もりもりなので、とっ散らかってる印象も拭えない。これがオスカーってなったら(まだ決まってないけど)、えー…って思う人もいるだろうなって正直思った。まあ、指がソーセージの宇宙とかめっちゃ笑えたけどね。

ヒーローものでないマルチバースを主体にした映画のテーマとかメッセージっていうのは、「色んな選べなかった人生があるし、宇宙のどこかでは別の違った人生を生きてる自分がいるかもしれないけれど、どの人生も一長一短だよ、今の人生を大事に楽しもう」ということに尽きるかと思う。「ミスター・ノーバディ」っていう私の好きな映画もそんな感じの映画だった。
で、この映画もテーマはそれ。だけど、そこにアクションやらなんやらかんやらいろいろ盛り込んでいるので、結構ついていくのに必死。最初の方は何がどうなっているのかわかんなくて不安になった瞬間があった。が、最後はそのテーマに絞り込んでいくので、よく言えばわかりやすい、悪く言えば単純な結末になった。でもね、すっごいわけわからんのを必死に追いかけてきてなぜか最後は涙がこぼれる不思議な映画だった。

それと、ハリウッド映画に出てくるアジア人の立ち位置って、これまでずっと画一的だし悪役だったりが多かったけど、近年ほんとに変わってきたなと思う。それはアジア圏の人間として素直に喜ばしいことだと思うし、アクション映画なんかは香港の方が絶対すごいって!と私はずっと思ってきたので、それがこんな風に大きく取り上げられるのは嬉しいなって思った。

しかし、私はといえば、この映画で助演を務めたキーホイクァンに個人的思い入れが非常にあるので、この映画の客観的評価はちょっと難しいんだな。なんせ、中学生の時の私の激推しだったんですよ。ジャッキーとかリバーとかも好きだったけど、イチオシはなんといってもキーくんだった。毎月ロードショーって雑誌に彼の写真が出ないかと楽しみにしていたし、写真集も買って毎日眺めていた。「インディジョーンズ魔宮の伝説」と「グーニーズ」だけで表舞台から消えていった彼について、インターネットが普及してからふと調べてみて、ハリウッドで裏方の仕事をしていると知った時も、ああ、でも映画関係のところにいるんだ、がんばってるんだなって思っていた。そんな彼がこの映画でスクリーンに復帰して、ゴールデングローブ賞を取ったんですよ!その涙ながらのスピーチに私もめっちゃ泣いた。そしてついに今日、スクリーンで再び見ることはもうないだろうと思っていた彼を見て、完全に私は中学生に戻って彼の演技を見つめていた。やっぱりすごかった。スピルバーグの秘蔵っ子と言われていた彼の演技力は素晴らしかった。気の弱い優しい旦那さんの役から、宇宙を救うために覚醒した男性の役、エブリンに振られてしまって、その後成功したけれどやっぱり彼女のことを思っている彼の役まで、一つの映画の中で何役もをこなし、それぞれの役を本当に魅力的に演じていた。この映画が作品賞に値するかどうかはわからないけれど、助演男優賞を取ったのは贔屓目なしで納得できたし、オスカーも取ってほしいと心から思う。
キーくんが涙ながらに、「僕は子供の時に成し遂げたこと以上のことはもうできないのだろうかと思っていた」とスピーチしていたけれど、ハリウッドがダメでも戻る場所があるドニーさんやジャッキーと違って、移民であるキーくんには戻るところがなかった。その中で数少ないチャンスを掴んで、もう一度表舞台に立ち、その実力を思う存分見せてくれた彼に心から拍手を送りたいと思う。
これからまた彼の映画やドラマが見られることを楽しみに待ちたい。また推しが増えて大変だわ~うふふ。