エイデン

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのエイデンのレビュー・感想・評価

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アメリカに住む中国系移民エヴリンは、夫のウェイモンドと共にコインランドリーを経営する平凡な中年女性
エヴリンは仕事や家事に追われ、更に国税庁の監査や春節のパーティのため厳格な父(ゴンゴン)が渡米してくるなど慌ただしい日々を送っていた
そのせいか気難しい娘ジョイとの関係も上手くいかず、夫のウェイモンドに至っては密かに離婚申請書を渡すタイミングを見計らう始末
そして春節当日、監査の日も重なって朝から大忙しのエヴリンの元に、ジョイが恋人の白人女性ベッキーを連れて来る
同性愛者であるジョイのことをゴンゴンは認めないと確信していたエヴリンは、慌ててゴンゴンに彼女をジョイの「良い友達」と紹介
それに傷ついたジョイは、監査に同行して通訳をするという約束を反故にして出て行ってしまう
仕方無くウェイモンドとゴンゴンを連れ、エヴリンは国税庁を訪れるが、エレベーターに乗り込んだところ、突然ウェイモンドの態度が豹変する
ウェイモンドは有無を言わさず見知らぬデバイスをエヴリンの両耳に付けると、離婚申請書の裏面に監査官との面談で使えと指示を残し、元の態度に戻ってしまう
その間 幼少期からの自分の人生を幻視していたエヴリンは訳がわからないまま監査へと向かうのだった
几帳面な監査官のディアドラは、早速 経費の内容に不備を見つけて指摘
その対応の最中、まだ夢うつつといった状態のエヴリンは、とりあえず先程ウェイモンドが残した指示に従ってみることに
靴を左右逆に履き、エレベーターを降りた際に見かけた用具室を想像するという奇妙な内容を実践すると、両耳のデバイスが起動
それを押してみたところ、突如としてエヴリンの意識は用具室の中へと吸い込まれる
そこにいたウェイモンドは、自らをアルファ・ウェイモンドと名乗り、この世界には無限の“多元宇宙(マルチバース)”があり、別の選択が行われた世界からやって来たと説明
監査官との会議と用具室、それぞれに同時に存在しているような感覚に混乱するエヴリンは、アルファ・ウェイモンドからマルチバースの危機のため力を貸してほしいと頼まれる
理解できないエヴリンは、監査の方が重要だとディアドラに向き直るも、混濁する意識ではまともな対応もできない
そんな中、アルファ・ウェイモンドはマルチバース全体を破壊しようと目論むカオスの化身“ジョブ・トゥパキ”の存在を教えるが、用具室に突如現れたディアドラによって首をへし折られてしまう
そしてエヴリンもまたディアドラに頭を殴りつけられてしまうのだった
意識が現実に引き戻されたエヴリンだったが、結局監査はウェイモンドの助け船で今日の夜までにやり直して持ってくることとなる
その帰り、様子のおかしかったエヴリンが離婚申請書を握りしめていることに気付いたウェイモンドは、それを読んだためだと勘違い
エヴリンはアルファ・ウェイモンドが書いた指示を読んでいただけだったが、ウェイモンドとの会話でようやく離婚申請書に気付きショックを受ける
更に先程のマルチバースで体験したことにまだ混乱していたこともあり、敵に立ち向かえというアルファ・ウェイモンドの言葉に従い、やって来たディアドラに襲われると勘違いして殴り付けてしまう
そのせいで警備員を呼ばれてしまうエヴリンだったが、そこに再びウェイモンドの身体を借りたアルファ・ウェイモンドが現れ、あのデバイスを使用し見事なカンフーで警備員を倒してしまうのだった
事態は大事となり、エヴリンとアルファ・ウェイモンドは国税庁の施設内を逃げ回るはめに
そんな中、アルファ・ウェイモンドは、自分がこの世界から大きく選択が異なった“アルファ・バース”の出身で、その世界ではエヴリンが初めてマルチバースの存在を感知、他の世界の自分の記憶や経験にアクセスして自分の力とする“バース・ジャンプ”という技術を確立したことを語る
デバイスはそのためのものだったが、適性の優れたある若者にバース・ジャンプを繰り返し強要する実験を行って精神を破綻させ、常に全てのマルチバースと繋がって超常的な能力を発揮するジョブ・トゥパキを生み出したことを語る
ジョブ・トゥパキは全てのマルチバースを破壊できる技術を作り上げており、彼女の目論見を止められるのは、この世界のエヴリンしかいないのだと言う
そのために狙われているらしいエヴリンは、マルチバースを救う戦いに巻き込まれるが、遂に姿を見せたジョブ・トゥパキの正体が実の娘ジョイだったと知り・・・



ダニエルズ監督によるSFアクション映画

平凡な主婦が唐突に直面する家庭と世界の危機!
最近流行り?のマルチバースの破壊を防ぐため、マルチバースの自分と繋がり立ち向かうという奇妙奇天烈で壮大な戦いが描かれる

凄まじく壮大な物語なのに、中心にあるのは家族の危機という素朴さも大変良い
一見ミスマッチなように見えて、徹底してそのテーマを貫いてるストーリーは素直にスゴい

アクション描写もかなり良く、マルチバースの自分の能力をインストールして戦う独創的な設定と、本格カンフーアクションの組み合わせが面白い
更にマルチバースにアクセスするごとに変なことをしなければならないという謎設定で、コメディ要素にも繋がるお得仕様

対してマルチバースでエヴリンが体験する混乱を表現する試みなのか、映像もストーリーもボリューミーで、まさしくカオスの様相
これについて来れるかどうかで評価は分かれそうではある
とはいえ、その中心を貫くテーマ性もしっかりしているので、完全なカオスとは言えない辺りはバランス取れてる
特にラストのまとまりが良すぎて、謎に泣いてしまった

誰にでも無限の可能性があり、エヴリンもまたマルチバースと触れることを通して、自分の可能性を垣間見ていくわけだけど、やはりその中でブレない価値があることに気付いていく
そういう意味で、あらゆる人生を肯定する物語になってるのは好き
諸々異なる部分は多いけど、『素晴らしき哉、人生!』とかにも通じる、優秀な人間讃歌と受け取った
まあ誰でも観やすい作品とは違ったハードルの高さもあるけど、唯一無二な世界観と幅広い人に刺さるメッセージが同居した良作なので挑戦してみてほしい
エイデン

エイデン