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2.0
『拝啓、別次元の私へ。』

A24最大のヒット作として、エラく気合いの入った宣伝、そして大規模な公開館数。A24もいよいよマジョリティに向けたエンターテイメントに舵を切ったか…!と期待に胸を膨らませ劇場へ。

あぁ、まごうことなきA24配給作品だった。
従来のエンタメ作品を鼻で笑うかのようなエキセントリックな仕上がりに興奮、そして混乱…。

キー・ホイ・クァンのウエストポーチ功夫(カンフー)は実に見事で、アクション映画好きとしては超絶アツくなれるシーンだった。
本当に素晴らしかった。

が、その後が続かない。
それぞれのシーンのアイディアは抜群に良いのだが、一本の作品として見た時に何ともまとまりのない印象。
"カオス"だとか"マルチバース"だとか、そういうのが流行りなのかもしれないが、"何でもアリ=自由で楽しい"には必ずしも結びつかないような気がした。

マルチバースを謳って作品の規模感を大きく感じさせたにも関わらず、最終的な帰結は極めて小規模で内省的なものになっており、つまるところ今作が一番言いたかったことは何なのか?と悩んでいる次第。
もちろん、"家族愛"とか"優しさ"とか、生きる上で大切にしたいと私も思うが、アレだけ大きく風呂敷広げといてその着地は…と思うのである。A24らしい、と言えばそれまでだが。

視覚的・構成的に"楽しい"作品であることは私も疑っておらず、高評価をつけている方々のお気持ちもよく分かるのだが、どうにも煙に巻かれたようなモヤモヤした気持ちで劇場を後にした。

初回版のパンフレットは表紙のエブエブアイズ(眼)が動くギミック付き!
遊び心あふれるパンフレットに☆5.0!


《余談》
上映開始直前まで、"歯科衛生士のお姉さんには絶対彼氏がいる説"を隣の友人にアツく語っていた男性がいた。
友人には軽くあしらわれていたし、職業で彼氏の有無を判断するとはなんて珍妙な論説か…と呆れたもんだったが、今作を観た今謎が解けた。
今作の肝は、珍妙な行動をすれば他の世界線の自分の能力を得られる…という"バース・ジャンプ"だ。
要するに、彼の論説はバース・ジャンプをするために欠かせない珍妙な行動だったのだ。(そんなわけない)
是非ともバース・ジャンプを成功させて、自分をあしらった友人を頷かさせるだけの説得力を獲得していただきたい。