ぶみ

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのぶみのレビュー・感想・評価

1.5
ようこそ、最先端のカオスへ。

ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート監督、脚本、ミシェル・ヨー主演によるSFアクション・コメディ。
コインランドリーを経営する女性が、国税局の監査が入り、税の申告をやり直さなければいけなくなったところ、突然マルチバースを行き来することとなった姿を描く。
主人公となる女性エヴリンをヨー、夫をキー・ホイ・クァン、娘をステファニー・スー、父をジェームズ・ホンが演じているほか、国税庁の監察官としてジェイミー・リー・カーティスが登場。
公開前から、予告編が頻繁に劇場で流されており、「エブエブ」と自ら略称を言っていたのが気になっていた本作品。
作品がヒットして、作品を愛するファンから自然発生的に略称が発生するのはわかるものの、公開前から自ら「エブエブ」と名乗るなんて、私に言わせれば、デビュー前のアイドルが、自らのグループ名や名前を「○○と呼んでくださいっ!」と言っているようなもので、ドン引きでしかない。
そんな嫌悪感を抱いてしまっていた本作品、その予感は早々に的中。
映像は、そのキャッチコピーどおりカオス状態で、とにかく次から次へとマルチバース間を切り替わっていくため、当初は理解しようと何とか頭が動いていたものの、途中からついていけず思考停止となり、映像を眺めているだけの状態に。
確かに、カンフーアクションを中心とした異次元間の映像は、一見の価値ありではあるものの、前述のように上っ面を眺めているだけの状態であることから、知的好奇心を満たすまでの領域に達していないため、目の前で繰り広げられるドタバタ劇の何が面白いのかわからず、苦痛の時間を過ごす羽目になってしまったのが正直なところ。
そんな状態であったため、終盤一気に舵を切っていくドラマについては、前段がないままに突入したようなもので、カタルシスも何もあったものではない。
ただ、キャストの演技は、もう文句のつけようもなく、中でも、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』や『グーニーズ』で子役を演じていたキー・ホイ・クァンが、ジャッキー・チェン似となっていたのは驚きの一言。
観る側を、あえて置いてきぼりにさせるような展開は、穿った見方をしてしまうと、観る側に「何を見せられてるんだろう」「結果、よくわからないけど面白かった」といった感想を覚えさせるものであり、裏を返せば、内容の薄さを映像でカバーしているのを露呈しているようなもの。
私にとって、面白い、素晴らしいと感じるには、「観る」から「思考する」へと繋がる能動的な行動が多かれ少なかれ必須であり、「見せられる」という受動的な作品には魅力を感じないことを再認識させられるとともに、どんな作品にも賛否両論がある中、それも時代を反映していると言われればそれまでだが、「考える」ということを放棄したような事件、事象を目にすることが多い現代を切り取ったような作風の本作品は私には全く合わず、明確に否としたい一作。

何してけつかる?
ぶみ

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