アー君

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのアー君のレビュー・感想・評価

3.0
コインランドリーを経営しているアジア系の中年女性が主人公というのは大胆なキャスティングでインディペンデント性のある映画会社というのはもちろん知っているが、保守的なショウビズ界に大きな爪痕を残したのではないかと思う。

国税局の経費報告や親子間の葛藤など世俗的なテーマとアクションや多次元世界をミックスさせてよくあるタイムループものとは違うクセのある映画であった。

コインランドリー経営は固定収入がなく売り上げ予測が見えない不安定な収益が特徴である。エブリンの心の中か生まれた予測不能なタラレバの異世界体験は多動症の視覚世界よりも統合失調気味の「言葉のサラダ」改め『映像のサラダ』の現実逃避として考察している。

しかし一度見ただけだと自身の読解力のなさもあるとは思うが、かなりスピーディーな展開でストーリーが「走りすぎ」という感じもあり、内容が掴みづらく三回ぐらいみてやっとこの映画が分かる感じだと思う。

マルチバースという(昔でいうところのパラレルワールドかな?)何層にも派生した複雑に絡み合う世界を映像として描ききれたかのかといえば、状況が理解しきれず微妙だったのは正直な意見である。

比較するのはお門違いかもしれないが、ノーランの「インセプション」ではアリアドネを狂言回しにすることで夢の世界をタイミングよく観客の疑問を答えていたが、この映画におけるエヴリンの夫がその役割を担っているとは思うが、行動重視による説明不足でカオスの世界が一体なんなのかよく分からなかった。

前にも述べたが、この映画は制作サイドが後先を考えずに一、ニ歩ほど進みすぎている。支離滅裂とまで言わないが、このようなカオス系は半歩先ぐらいにしておくのが観る側として丁度良いとは思うが。

パンフレットについては表紙はおそらくマットPPを貼っていると推測するが、何よりも目玉を使うのが、この仕様の目玉(笑)。また中面のヴィジュアルは銀特色を使った両観音折仕様。相変わらずの加工キラーなデザインである。欲を言えば丁寧にまとめずにフォントもページごとに変えて混沌とさせてもよかったのかなと。

[イオンシネマ板橋 11:30〜]
アー君

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