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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのicoのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

予告をちょっと観ただけで、前情報ほぼ入れずに見て良かったと思った。

最初はマルチバースアクションSFとして観ていたのに、途中からやたらとエブリンに自分を重ねるシーンが増えていった。映画を観て自分の世界がこうだったら、とか、もしあの時にあの選択をしていたら、とか自分がよく考えてしまうことを。人生が辛い時ほどそういうことを考える。これは空想の話ではなくて私たちの話かも、と思った。
物語は進んで、途中で娘のジョイにも引き込まれる。どのユニバースでも、最も最悪な選択をわざとする彼女は、常に虚無を感じ、何を選択しても無意味と知ってる。いわゆる「無敵の人」ってこういう感じなのかも、と思った。もちろんそこまでいかなくても、人間の最後は一様にして死ということを分かってる私たちは、今なんて何の意味もないのではと考える時もある。

そうやって2人の感情に自分を重ねて観ていたら、ジョイはエブリンが自分と同じだ、と言う。なぜコインランドリー経営でカラオケ機器の請求があるのか。ここで全部の円が重なって、それに気がついたら号泣してた。石のシーン見ながら、今はどんなに絶望しても私は石はいやだと思ったけど、もう彼女たちはそこまでいってるんだなと思うと辛かった。

最後、全てを捨てることを決めたジョイを引き止めながらも、彼女の選択を尊重しようとしたエブリンが勇ましかった。そして「ここにいてほしいと思う」「どんな虚無でも、幸福と思える瞬間がある。それがあるから、ここにいたい」というセリフで、ジョイも私も多分エブリン本人も、一つの答えに辿り着いてた。社長室でラタトゥーユの話をしたシーンを思い出した。たとえ短くても大切な誰かとのかけがえのない一瞬あるから、私たちは最低な状況でも生きてたいって思うのかもしれない。

最後まで見たら、最初は頭に入らなかったタイトルが自分のものになってた。
そんな映画でした。
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