ピロシキ

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのピロシキのレビュー・感想・評価

4.4
ダニエル・ラドクリフが屁で海を驀進する下品でイタイ前作は、最後に突然の感動展開があって、はぁ?って感じであまりハマらなかった。そして、1年心待ちにした最新作。案の定ケツアナ確定などの下品なギャグはまったく笑えず、最後に訪れる予想通りの感動展開には……あらま、予想に反して涙。

人生が選択の連続であるならば「選ばなかったほうの道」が気になるのは当然だろう。後悔しない選択を!と言われても、もしもあの時…と後で思い出すことがあったっておかしくはないはず。ここではそんな「選ばなかった道の先」が一挙に、そして矢継ぎ早に、脈絡も順序もなく提示される。このカオティックな編集には終始圧倒される。よくぞここまでやったな、と思う。

いってみればムダに壮大な親子喧嘩、テーマは「家族を大事にしよう!」と、これまた標語のごとくシンプルである。そんななんてことないありふれた結論に到達するまでに、この物語は途方もない遠回りを経験する。それが人生なのかもしれない。人生なんて、死ぬまでの壮大な遠回りなのかもしれない。でもそこに面白さがあるんだから、まだしばらく死ぬわけにはいかない。

仮に、こんな奇天烈な映画が賞レースを総なめにしてしまっても、別にいいんじゃないか。そういう世界線があっても。
ピロシキ

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