アンソニー

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのアンソニーのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

アメリカンサイズの
高カロリー・ファストフードとでも
言えばいいのでしょうか?
しかし、そんな中でもこの映画だけの
味というのもしっかりあったと思います。

まずは、あらゆる要素がてんこ盛りで
万人受けしそうで万人受けしない。
めちゃくちゃキャッチーな感じかと
最初は思っていましたが
あまりにもキャッチー過ぎるというか
通り越して派手派手になってます。
でも、それがこの映画の魅力でも
あると思うので好みが分かれるところです。
個人的には好きです。

映像作品で無ければ不可能なほどに
場面がコロコロ変わります。
さらにその世界でも平行して
別の小ストーリーがあったりして
とにかく情報が多いです。
インターネットで様々な情報を
日々、目にして処理しているような
現代に生きる人々が視聴者で無ければ
こんな映画成立しないと思います。
マーベル作品だとかでマルチバース?
みたいなそういう下地がある前提で
「この世界は様々な宇宙と…」
「あー、マーベルみたいな感じか…?」
といった感じ。
説明は最低限でどんどん駆け抜けて行く
ものすごいパワーです。
しかし、そんな中でも
主軸となる話は税務署内だけで
完結していたりと
無駄な情報はなるべく控えて
配慮はされているなと思いました。
突飛な行動が遠くの世界と繋がるというのも
普通はしない選択肢を選ぶ事で
より大きな分離が起きると思えば
理にかなっていて、なるほど…
と思いました。

あと、世界の滅亡とか多元宇宙?だとか
壮大な物語を一つの家族の話に
当てはめていったのが上手いなぁと
思いました。
娘や夫とも向き合うことなく
日々の忙しさに疲れ切っていた母が
別の世界から来た別人格の娘や夫。
中身は全然違うはずなのに
どこか他人には思えない…。
そんな人たちを通じて
本当の娘や夫と繋がりを取り戻す。
素敵だなと思います。

様々な世界線に存在するキャラクターも
選択が違えば今の自分がなれたかもしれない
もう一人の自分。
それも上手いなぁと思いました。
誰しもが「あの時ああすれば」とか
考えたことあるはずです。
それでも、今の自分の人生を大切に
生きるしか無いというのが
良いメッセージですね。

誰かに優しくしたとしても
自分の間違いを認めたとしても
決してハリウッドスターのように
輝かしい成功を掴めるわけではないけど
それでも、誰かを傷つけたりする選択よりは
ずっと良い未来があるはず。
そんな風に私は感じました。

ただ、最初に申し上げた通り
あまりにも要素がてんこ盛りで
仕方がないといえばそうなんですが
とても惜しい感じもするというか
なんというか。
頭も混乱しているせいなのか
泣きそうになったりするんですが
何故、泣いてるんだろう?と
疑問に思ってしまいます。
一度、家に帰って整理した今であれば
何となく理由は分かるのですが
映画を観ている最中に雑念があるのは
とてももったいないです。
なんだか、泣かされているような
そんな気もしないような…
でも、ファストフードも同様で
完全にカロリーの暴力で
美味いと思わされてる節ありません?
アホみたいにマヨネーズかかってて
味濃いだけやのになんか美味くて
なんで、美味いんやろ…って
なるときないですか?
多分それと一緒です。