真っ黒こげ太郎

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスの真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

4.5
ようこそ、最先端のカオスへ。

開眼せよ!

マルチバースとカンフーで世界と、家族を救え!




コインランドリーを営む中国人女性のエヴリン・ワン・クワン。
彼女の店はいつも火の車状態で、頑固な父親を介護する日々を送り、頼りない夫や反抗期の娘との関係も冷え切り、確定申告も上手くいかず、人生に疲れきっていた。

そんな中、夫のウェイモンドが急変し「僕は別の宇宙から来た!」と言い出し、エヴリンの人生を見せたりでたらめでべらぼうな事をさせるカンペを渡したりと奇行を繰り広げる。
半信半疑ながらもカンペに掛かれていた任意コードを実行したら、並行世界の別の宇宙(マルチバース)にジャンプした!!!

別の世界のウェイモンドによると、全宇宙の脅威となる敵、”ジョブ・トゥパキ”が現れてヤバい事になったので、別の宇宙の自分自身の力を得て敵を倒して欲しいとの事。
訳が分からなくて混乱するエヴリンだが、実際に恐ろしい敵が現れ、いやおうなしにマルチバースの命運を賭けた戦いに巻き込まれてゆく。

だが、その恐るべき敵、”ジョブ・トゥパキ”の正体は、エヴリンの娘ジョイ・ワンだった!!!




人生に疲れていた平凡な主婦が、ふとしたことから並行世界の脅威との戦いに巻き込まれてゆく、SF・カンフー・アクション・コメディ映画。
監督は「スイス・アーミー・マン」のダニエル・クワン氏とダニエル・シャイナート氏のタッグで、主演はカンフーアクション女優としてお馴染みのミシェル・ヨーさん。


今年度のアカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞等で7部門を受賞した名誉ある本作。

…だが真面目な映画ファンには申し訳ないが正直言って、俺はアカデミー賞には一匙の興味もねぇ!!!
最初本作の事を知った時は「目玉で 作られたロゴ キモすぎだろ!」と思ったし、配給がA24なのでまたアート系ホラー映画と思ってました。w

本来ならこの手の、言っちゃあ何だが頭が固そうな感じがする映画はスルーする所なんですけど、それが「主演がアクションスターのミシェル・ヨーさんのカンフーアクション映画」で、「アカデミー賞主演女優賞を見事獲得した!」となると話は別です。
最近はアジア系の人がアカデミーで注目されても「知らんがな」って感じだったのですが、何しろ今回受賞したのがバリバリのアクション派だと(勝手に)思っていたミシェル・ヨー姐さんですからね。
この手のショーレースとは無縁そうな人だったのに(失礼な文章)、驚いた。w
自分はガッツリ主演作を追いかけていた訳じゃないのだが、人生何が起こるか分からねぇもんだ。



そんなミシェル・ヨーさんが一気に注目の的になった本作、あらすじをざっち見た感じだとジェット・リーさんの「ザ・ワン」みたいな感じがして面白そうだし、予告も何か良い感じに意☆味☆不☆明だったので劇場へ見に行ってきました。



…このエイガ、スッゴイヘンなエイガだなぁ!!!

でも、俺はこれ好き。


お話的には「異次元の戦いに巻き込まれた上に敵が闇落ちした娘でどうすっぺ!?」というお話なのだが、繰り広げられる物語は終始カオスな映像で何処に転がるか分からぬ展開の連続。


主人公は敵と戦う為にあらゆる並行世界にジャンプするのだが、そのジャンプする為の行動がでたらめでべらぼうな物ばかり。
飲み物ラッパ飲みしたり靴を左右逆に履いたり、挙句突然愛の告白をしたりお漏らししたり(!?)と意味不明なトリガーでジャンプする。
何と言うかTASの任意コード実行を思い出すメチャクチャぶりである。
(分からなかったら御免)

そしてその並行世界も、カンフー戦士になった世界やスターになった世界みたいなよくあるヤツもあれば、指がソーセージになって食えたり(汚い)意思を持つ荒れ地の岩だったり(!?)と、変な世界が盛り沢山。

また監督がおなら&ゲップだらけだった「スイス・アーミー・マン」の人なのでお下品なネタも満載。
とんでもない○ィルドーヌンチャクやダブルでけ○なあな確定。
「イースタン・プロミス」や「レディ・ウェポンZERO」を彷彿とさせるおっぴろげ開脚フル○ンカンフー等、かなり変態なお下ネタが展開。
ミシェル・ヨーさんもお漏らしする(!?)わ、ゲロを吐くわ(!!?)で体当たりな演技を披露!!!
登場人物も奇行しまくる連中だらけで、その所為で脇役に至るまで無駄に個性的になってる。
恐らく変態度数はトロマ映画辺りといい勝負かもしれない。w


こんな感じで、変な世界観に奇行だらけの人間絵巻、先の読めなさすぎる物語に「なんだこれは!」と叫びたくなること請け合いである。
恐らく人によっては完全に付いて行けないと思う。w



しかし、話の根っこはシンプルで話は意外とスッと入って来たし、ミシェルさんのキレキレかつ並行世界を駆使したアクションも見ごたえがあったりして、何だかんだで飽きずに最後まで楽しめた。

お目当てのミシェル・ヨーさんのアクションは最初の頃こそないものの、中盤からはマルチバース世界を渡り歩き一気に覚醒!!!
殺陣はかなり柔軟でしっかりしているし、ミシェル・ヨーさんは勿論の事、他の主演陣の動きもキレッキレ。
並行世界の技術を駆使したアイディアカンフーアクションをフル活用し、どんなアクションが展開されるかの先を読ませず、飽きさせない。
クライマックスの自愛カンフーアクション(爆)もバカバカしいながらハートフルなアイディアに富んでいて見事。

また複雑な世界観の内容も「家族を救う」展開と「優しさ」に溢れたメッセージ性で上手く収束させている。
並行世界の物語も断片的ながら優しく、美しく描き、クライマックスのベタだけど綺麗な展開に持っていく。

登場人物も主人公を始め、しっかりキャラが立っていて意外にも(おいおい)分かりやすい。
ラストでは各々の演技力が大爆発しており、特にミシェル・ヨーさんの優しさに包まれた”母”の演技は見事でした。

ミシェルさんも今では60歳ですが、柔軟でキレのあるアクションと円熟味のある演技力で見事に答えてくれたと思います。
デビュー当時は「ミス・マレーシア」出身のアイドル女優だったのがサモハンさんの弟子となって、最強の女武打星として成長しここまで大成した事を思うと遠くまで来たものだなぁ。
(偉そうに何言ってんだ)



…まぁそれでも余りにカオスすぎるし、下品なネタも強いし、見ていて混乱する所や疲れる所も多いので、確実に万人受けはしないと思います。w

後、私的にスゲェキツイ場面があったのでそこを思い出すと「ヒィッ!」ってなるのでそこは勘弁して欲しかった。
実際に見せてはいないし、私的に文章にしたくないので書かない(震えまくり声)が、下手なやりすぎゴア映画よりキツイって(白目)



そんなこんなでカオスとお下品の中に愛と優しさ、そしてキレキレカンフーを内包した、愉快な一作でした。
アカデミー賞の映画と言ってもそこまで堅苦しい話ではないし、基本はエンタメ寄りでヘンテコ映像とアイディアカンフーを楽しめばいいと思うので(いいのかそれで)興味がある方は自己責任でどうぞ。w
合わなかったら…まぁミシェル・ヨーさんのアクションは良かったよねとでも思ってください(投げやり)。


何はともあれミシェル姐さん、アカデミー賞受賞おめでとうございます。
…失禁とゲロぶちまける役でアカデミー賞取るのは女優として良いのかと思うけどね!w