ぬ

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのぬのレビュー・感想・評価

4.3
だいぶ好きな見せ方のサイケデリックでカルトな映画でした、面白い。
テーマこそ家族愛的な万人受けしそうなものではあるけど、それ以外はなかなかのカルト映画っぽさであると思う。(褒めている)
あらゆるifの世界線に存在する自分のパワーを、「いまこの私」の肉体に憑依させる、自分の可能性のすべてを集結させて「いまこの私」を救う、それが他の世界線の私や、自分と関わるすべての人たちの運命もバタフライエフェクト的に変えていく、というのがロマンチックでドラマチックで素敵でした。
すべてはカンフーであるとか、物理的な存在は精神の容れ物であるとか、第三の目を開かせるとか、スピリチュアルチックなとこもおもろくて、『マトリックス』や『リベリオン』的な良い意味でのオタク臭さを感じて愛着が湧いた。

「意味わからないけど感動する」という前評判を結構聞いていたのですが、割と意味わかる映画でおもろかった。
というか、わかりたかったのでかなり気合い入れて観ました。
そしたら自分の好きな分野というか、得意な分野というか、わかりみ強めのふざけ方の作品で嬉しくなっちゃいました。
『マルコヴィッチの穴』『ホワイト・ボイス』『ウェイキング・ライフ』的なカオスさを感じる。(つまり好き)
やはりその奇天烈さはA24作品。
そしてこのテーマや設定をもって「コメディ」作品としてまとめ上げたのも、絶妙におかしくて好き、それもさすがA24作品。

私は逆に、家族愛的なストーリー、というかエヴリンとジョイの関係については結局あまりわからないというか、そんなにって感じだったんだけど、ひたすら映像や設定やふざけ方が好きだったので楽しめた。
エヴリンとウェイモンド、エヴリンとゴンゴン、ジョイとゴンゴン、の関係性やお互いを理解していく様子はすごくよかったんだけど、肝心の(?)エヴリンとジョイの関係性の変化は、イマイチ「わ、わからん…」という感じだった。
「ジョイはそれで納得できたのかな?」ってかんじというか、あんなに大規模に発展していたわだかまりが収まるほどの変化を感じなかった、というか…
でもたしかに、それが家族関係のリアルかもしれないし、結局関係性を繋ぎ止めてくれるのは「お互いにコミュニケーションをあきらめない」一点に尽きる、たしかになぁ。
「コミュニケーションをあきらめない」というのは、お互いのバランスが崩れると危険だけど、この作品は全体を通してエヴリンとその周りの人たちの「お互いを諦めない」気持ちのバランスが整っていっていることを気づく。
とか思わされるので、結局いい映画なんだと認めざるを得ない、すげぇ。

役者さんみんな素晴らしいけど、ジョイ役のステファニー・スーが素晴らしい!
なんて絶妙な表情をするんだろう、楽しい表情、寂しさや怒り、諦めを感じる表情、でも諦めきれないような表情、ジョイというキャラクターの複雑な気持ちをすっかり表現していてすごかった。
あと単にジョイ、友達になりてぇ〜!

『レミーのおいしいレストラン』好きなのでテンション上がりました。(『ラカクーニ』は『ラタトゥイユ』みたいに元ネタになってる料理があるのかな?)

ちなみに犬が痛い目に合いますが、事前に知ってたのと、あきらかに「これは作り物」というのをわからせてくれる作りだったので個人的にはセーフでした。
ぬ