襟

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスの襟のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

アベンジャーズでマルチバースという概念を知った時は「じゃあなんでもありじゃん、つまんないの」と思っていたんだけど、それを全てひっくり返された。
なんでもありだからこそ、登場人物にとっての真実が見える。これはアントマンでも似たようなことをやっていたのだけど、この作品は全編を通して登場人物全員がそのことを体現してくるので、伝わり方がだいぶ違った。

一番やられたと思ったのは、主人公が渡された武器を使おうと思ったきっかけが娘を元に戻すためだったというところ。マルチバースに存在する全ての「私」を使って、娘を守ろうと体に鞭打って戦う姿に心を打たれない人間は恐らく人間やめてる。マルチバースを使った新しい「母は強し」である。

それと同じくらい心打たれたのは、最もひどい人生を送っている主人公だからこそ、最も強くなれるという設定。秀逸すぎて開いた口が塞がらない。
マルチバースという概念がでてきたとき、一番思ったのは「もしかしたら自分が成功している世界線があったかもしれない」という妄想が現実になるということで、その先には「自分が一番損している」と感じるようになることへの危惧があった。
それを一旦肯定した上で、可能性を突きつけるインパクト。これが一番効く。

夫というすべてを知っているようで知らない人間をメンターに使うことで、彼女にとって夫という存在が自分とは異質な存在でありだからこそ憧れであったということを徐々に示していく、達人技すぎて涙出る

映像も本当に言うことなしだった…。マルチバースの広大さを示すための顔がどんどん変わっていくカットは圧巻だった、このコンマ何秒のためだけに何カット何千人動かしてるんだよ…
知り合い全員に好評だった娘の衣装、全部良かったね、わかる。あと芝居上手すぎだね
思春期と片付けるには大きすぎる親類にさえ受け入れられない痛みを持った心を、ドーナツで表現とか…芸術点高…

なんと一番心に来たセリフは監査官。
「私のような可愛くない人間がこの世の中を回している」
国境を越えましたねこれは…何度も言うけど芝居が上手すぎる
なんで旦那さんの説得で許したんだろと思ったけど、本当の理由は頑張る奥さんに共感したからというあまりにも華麗なオチで涙、私も許す

しっかり喧嘩できた親子も、セリフがとにかく秀逸。ここのやり取りもう1回見たいです
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