LEAKCINEMA

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのLEAKCINEMAのレビュー・感想・評価

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何故本作が第95回アカデミー賞の7部門を総なめにしたのか。それは観ていただいたらきっと分かる筈です。

これほどまで可能性に満ちたバカったらしい超大作には滅多に出会えない。

作品の世界観が壮大すぎるにも拘わらず、何故か劇中疲労感に襲われないのがまずすごい。マルチバースを題材にした作品であるため、同一人物が姿を変え次から次へと登場する。もちろん頭は困惑し始めるが、決して内容に置いてけぼりにされることはない。話が拗れれば拗れるほど、不思議と意識がスクリーンに釘付けになる。その絶妙なせめぎ合いが本作の魅力の一つであろう。あと主人公の目線になって物語を追うことが出来るのが大変ありがたい。序盤は “別の宇宙の夫” に言われるがままの主人公エブリン同様、物語が進むにつれ作品の全体像が徐々に見えてくるのだ。上手いやり方である。

もう一つの魅力はあからさまな「バカバカしさ」。なんと劇中長ぁ〜いデ◯ルド型のヌンチャクや、ア◯ルプラグ型のトロフィーが登場したり、本作の悪の根源というか地獄の門である入口が、何故かベーグルだったりする。その作品全体に散りばめられたバカバカしさが、困惑からの脱出を手伝ってくれていると思う。(何故かわからんが、人間の指がソーセージになっている次元も登場する)

そして何よりキャスト陣が素晴らしい。主人公エブリンの冴えない夫役を務めたのは、80年代のハリウッドを支えた子役の一人、キー・ホイ・クァン。彼は本作で俳優としての本格的なカムバックを果たし、見事アカデミー賞で助演男優賞を受賞した。国税庁の(恐怖の)監察官を演じたのは、『ハロウィン』や『ワンダとダイヤと優しい奴ら』のジェイミー・リー・カーティス。個人的に彼女はホラー映画よりも、コメディ映画の方が断然お似合いである。彼女も第95回アカデミー賞助演女優賞を受賞した。

まさに圧巻の一言。これほどまで妙竹林で忙しない作品が、世界を代表する作品の一つとして映画史に刻まれたのだから。これからはきっと可能性と逸脱の時代が到来することであろう。固定概念にサヨウナラ、融通無碍にコンニチワ。(あと「親切心」も忘れずに)
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