fuming

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのfumingのレビュー・感想・評価

2.0
個人的に近頃での最ガッカリ話題作。予告や試写会での反応が良かっただけに尚のことであった。
以下殆どネガティブな感想となる。

まず、あまりにもシーンの接続がとっ散らかっている。そういうコンセプトなのは理解しているが、しかしあまりにも「見るポイント」が分かりにくい。どのシーンがストーリーにおける重要シーンに値するものか判別するのが困難なため、映画への没入感が削がれてしまった。サスペンスやホラーならまだしもではあるのだが。
次にストーリーとテーマ性について。特にテーマは非常に現代的なものを扱っており、それ自体は良いと思うのだがクライマックスに向かうまでがあまりにも鈍重で、流石にこの内容とオチで2時間強の尺は長すぎると思う。個人的には90分くらいで良いくらい。
最後にアイデアについて。マルチバースを扱った本作であるが、そのテーマは日本のアニメ作品などでは頻出であり、イマイチ新鮮味に欠けたというのが正直なところ。憶測であるが、カンフーシーンなども含め日本ではアメリカ本国よりもセンセーショナルなウケ方はしていないだろうなと察する。

総評としては「光るアイデアやシーンはあるものの、それらを上手く調理出来ていない」といったところか。また伴って、見せ場やストーリーのクライマックスに対し視聴者の注目や感情を高め損ねていると感じた。
さて、本作は賛否両論ではあるもののオスカーを受賞している。なんとなくだが、当映画はあちらにおける「カメラを止めるな」的なポジションの映画だったのでは無いかと推測する。そして、それ故にウケ方も非常にカルト的で、大穴映画がバズってオスカーにまで駆け上がったのでは無いだろうか。もしその場合、無名の映画を草の根活動で広めていくプロセスの体験が無いまま「オスカー受賞作」という大作映画の看板を引っ提げて来たことで、余計に本作の評価は波紋を呼んでしまった気がする。やはり改めて、映画は自分の目で観て評価しなければいけないなと感じた。
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