April01

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのApril01のレビュー・感想・評価

3.2
大体最初の5分長くても15分くらいで、見るのやめるかどうか踏ん切りつける自分としては、まさかアカデミー賞7部門受賞作品の本作が、ここで辞めよかなと思いながら、きっかり15分後に休憩とってサぁ、どうする?って自問自答する対象になってしまうとは思ってもみなくて本当にビックリ。

とりあえず最後まで見た。実のところ、ご高齢のジェームズ・ホンさんに敬意を表して、が本音。序盤に登場した時は、久しぶりに見て、失礼ながら、言葉が悪いけど、まだいたの?!的な驚きがあり、彼へのリスペクトありきで最後まで完走したかも。

ドラマ「Xファイル」見てた頃、アジア系俳優の使いまわしが多くて、中でもジェームズ・ホンさん、クレジットされている以外にも自分が覚えてる端役がいくつかある。駆け出し時代のルーシー・リューが端役で出てて後に有名になってから、彼女はその役でクレジットされてるのを確認した記憶はあった。彼女の貧しい父役で出演してた場面はかなり悲しきアジアンなネタだったので印象に残っていて、本作鑑賞後、改めて確認したら、超脇役なのでその場面についてはクレジットすらないのであった。
チャイナ・マフィアのネタでかなり王道な役回りで出演したエピソードはちゃんとクレジットされてるけれど。

アメリカでスモールビジネスしている中国移民ファミリーの話。
家族問題を描いた小さな話と思わせて、実は壮大なSF仕立てになっていて、本格的なアクションでビジュアル的にも見ごたえあり、さらに過去作品へのオマージュ入ってたりコメディ要素入ってる面白さ、そして多様性の中に東洋哲学的なネタを入れてみたり、とにかく色んなもの詰め込んでるんだけど、散りばめすぎてごちゃごちゃで落ち着きがない。

そういう意味では落ち着かないアメリカ、のみならず落ち着かない世界にとって、これほど否定しにくい作品はないっていう意味では正しいのかな。映画は世相を反映するってことで。

そして本作のマルチバースの世界までもが当然のごとくアジアンテイストあふれる主人公の世界の中でのマルチってわけで。
ここまで振り切ってるからこそ逆に否定できない肯定一本やりになってる部分はあると思う。
これ否定しちゃったら差別主義者?!そんなレッテル貼られたくない、というトレンド。

マイノリティとしての言語の壁という問題ではなく、同じ中国語でも父には広東語、旦那には北京語で話しているとか、自身の英語は訛りが強く流ちょうではないながら、娘はネイティブな英語と間違いのある中国語、という家庭内複数言語の問題が描かれ、当事者視線でないとわからないことを教えてくれるという意味で文化的な見地を広め多様性ある社会を認める視点から良い作品であることには間違いない。

個人的に、自分自身の体験と照らし合わせてもエヴリンの気持ちはとてもよくわかる。実際涙もろい自分の性分として泣いた場面もあった。感動しなかったわけではない。共感部分は正直多い。ミシェル・ヨーの演技も素晴らしかった。

でも評価としては、時代が違えばカルト的人気を誇るB級超名作ってところでは。
April01

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