てっちゃん

テオレマ 4Kスキャン版のてっちゃんのレビュー・感想・評価

テオレマ 4Kスキャン版(1968年製作の映画)
4.3
重鎮パゾリーニさんの作品。
生誕100年ということで、パゾリーニ作品記念上映をやっていたので、いつものミニシアターへ上映して初日駆けつけしました。

物語は、とあるブルジョワ一家に、"訪問者"が訪れて、その一家とメイドが"訪問者"と性的関係を持ち、"訪問者"が去ると、一家とメイドは各々を解放させていくというお話。

何のこっちゃって話だけど、本作はキリスト教と資本主義を題材としているであろうということは分かったけども、その詳細なことなぞは知る由もないので、今回もばっちり買わせて頂きましたよ、パンフレット。

このパンフが実に良くできていて、様々な視点からの評論や批評が書いており、作品の理解を助けるものとしてすごく充実していて、読み応え抜群。
これぞ我が国が誇るパンフって感じ。

そんな訳で感想です。

謎の訪問者演じるテレンススタンプさん。
ものすごくかっこよくて、色気たっぷりのお方。
最近だとラストナイト・イン・ソーホーでお見かけしたダンディズムおじさまだったとは。
ちなみにテレンススタンプさん本人によると、本作から彼への報酬は一銭も無かったんだって。
パゾリーニさん、共産主義者だったのに、実は自分が1番お金に執着していたとか。

この訪問者が本作の中心であることは言うまでもなく、次々と父、母、長男、長女、メイドと性的関係を持つけども、訪問者は強引に強制的にするわけではなく、"頼まれた"からそうする。

特に印象的なのは、長女とメイド。
訪問者が去った後に、自分の奥底にあるものを解放させていく一家とメイドだが、長女だけは違う。
性的行為をしたことを拒むように硬直するのである。
なんで硬直という選択をしたんだろう。
欲のままに行動してしまった自分を蔑むため?
それとも性欲に対して自由に解放的になった母に対する蔑みから?

メイドは言うまでもないが、聖女として復活をする。
訪問者と関係を持ってから、美しさに磨きが掛かり、断食して、草しか食べなくなって、少年の傷を癒やし、空中に浮かぶ。
そして、復活を遂げるために土中に埋まる。
なんで彼女だけは、一家とは違う方向(絶望というか崩壊へ向かっていない)にいったんだろう?

そんないろんなこと考えても、言葉少ないし、情報も少ないから、結局は分からず終いなんだし、それが説明されないから、面白いという感情こそ、本作の魅力ではないでしょうか。

"訪問者"がどっかりと椅子に座り、ぱっくりと股を広げて座り、股間を強調させるシーンや、脱ぎ捨てた下着を執拗に舐めるように撮っていくシーン、メッセンジャーの彼とのいちゃこらシーンはものすごく強烈。

メッセンジャーの彼が、ぴょんぴょん飛びながら現れては、少し萎れたりするのは単純に面白いし、本作の雰囲気を少し明るくさせる。

それらで変態パゾリーニさん節は散見されると同時に、はっ!とさせる超絶ショットも炸裂される。
印象的なのは、母が全裸でポーチに寝転がっていると、そこに訪問者がやってくるシーン。
訪問者の顔と太陽の光が重なり、まさしく後光が差しているというか、そのなんだ、、神々しいのです。
でもパゾリーニさんによると、彼は神ではない
とのこと。
ますます分からぬ。

ほんでもって、ハイライトである父の全裸砂漠絶叫シーン。
こんな絶叫で終わる映画ってある?

パゾリーニさん作品の中でも難解に部類するらしいけど、パンフの助けがなかったら、本当になんのこっちゃ作品でした(それでも分からんけど)。
てっちゃん

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