シンタロー

テオレマ 4Kスキャン版のシンタローのレビュー・感想・評価

テオレマ 4Kスキャン版(1968年製作の映画)
3.6
ミラノ郊外の邸宅に暮らす裕福な一家。ある日、美しい青年が現れる。父パオロは労働者を抱える大工場の社長。美しく貞淑な妻ルチア、芸術家を志す息子ピエトロ、無邪気な女子大生の娘オデッタ、そして物静かな女中エミリア。突然同居することになったその青年は、各々を魅了し、関係を持つことで、ブルジョワ階級の穏やかな生活は徐々に混沌としていく…。
1975年に謎の死を遂げたイタリアの異端、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督による不条理作品の一つで、私も何度か挑戦していますが非常に難解。名も無いこの青年は天使なのか、悪魔なのか…。
富や名声など馬鹿馬鹿しい。欲望の赴くままに生きれば良い。青年との関わりにより、新たな悦びに目覚めていくものの、彼を喪失することで、生きる意味を見失い、自暴自棄となって、ブルジョワ階級は破滅する。唯一労働者階級であるエミリアのみに奇跡がもたらされる…。といった趣ですが、結局はパゾリーニの変態チックな世界観に酔いしれておけば良いのかと。エンニオ・モリコーネの音楽、4Kで修復された美しい映像美も見どころです。
謎の美青年に扮したのは英国の名優テレンス・スタンプ。透き通ったブルーアイズがやはり魅力的ですが、神憑って見える時と、悪魔のようなギラつきを放っている時とが混在していて、ちょっと怖い。とりあえず脱ぎまくりますが、着衣時もやたらピチピチのズボンで股間を強調しているのは、ゲイを公言していた監督の趣味としか思えません。ルチア役にヴィスコンティ作品でおなじみのシルヴァーナ・マンガーノ。メイクによって見え方が毎回異なる女優で、美女というよりはファニーフェイスの類だと思います。本作では性に目覚めて突如淫乱になる乱れぶりを披露。ゴダールの元妻として知られるアンヌ・ヴィアゼムスキーがオデッタ役。ゴダールの「中国女」とほぼ同時期。垢抜けないけど、まぁ可愛いのかな。そんな2人より見せ場が多いのは、本作でヴェネチア国際映画祭の最優秀女優賞を受賞したエミリア役のラウラ・ベッティ。最初に青年に欲情する作品を象徴するような役どころ。伝説的に語られる空中浮遊シーン等々、珍妙な場面が多々あり、非常におもしろいです。
シンタロー

シンタロー