ドナウ

テオレマ 4Kスキャン版のドナウのネタバレレビュー・内容・結末

テオレマ 4Kスキャン版(1968年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

シュールな寓話。

聖書、歴史、政治、文学、絵画辺りの知識があればもっとよく分かるのかもしれないけど、この意味不明さも魅力の一つ、難解で底が見えないほど深くに沈められた何かに惹かれてしまう。平和に暮らしているであろうブルジョワ一家の前に現れる男は家族を誘惑し幸福な家庭を崩壊へと導く悪魔か、貧しい労働者の敵を成敗する神か…。この男によって満たされた歪な欲望は、彼の不在により再びぽっかりと穴を開け、貪るように狂っていく。この一家の顛末は聖書からの引用かと思うけどよくわからない。家政婦エミリアは謎の男と共にこの家を出た後農場のような場所へ行き着き、そこで不思議な力に目覚める。貧しい人々の心の穴を埋める為に埋められた彼女は涙の泉を作る聖女になる。これは指導者というかジャンヌ・ダルクっぽくて、息子ピエトロはパゾリーニの分身のようにも見えた。パゾリーニの荒野は神話の世界のような気がするけど、全てを捨てた父親パオロは全裸で荒野を彷徨い咆哮を上げる彼はとても救われたようには見えない。

映像はとてもキレイで、引きの構図はベルトルッチに受け継がれているのでしょう。あの農場も1900年で使われた場所に似ている気がします。
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