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テオレマ 4Kスキャン版のtackyのレビュー・感想・評価

テオレマ 4Kスキャン版(1968年製作の映画)
4.5
パゾリーニといえば、最初に観たのが「ソドムの市」なのと、あの強烈な死に方とをふまえて、避けてきた感はある。

しかしこの作品を観て、やはり天才的な映像作品を作る人なんだと思った。

ここかしこに、左翼思想が絡まった、ブルジョワ家庭の崩壊を描いている。
主人、妻、娘、息子、家政婦。全員が一人の青年との交流と肉体関係を結び、その青年が突然居なくなると、それぞれが精神崩壊してしまう様を描く、

冒頭のドキュメントを観ているようなカットに始まり、
庭から屋敷に入り出る家政婦のワンカット。その後の青年と結ばれる件、
同じカットで、娘の出入りを描き、やはり最後は青年と結ばれる件。
草を食べる家政婦の遠景ショットと、有名な空中浮遊、などなど。

ラスト、主人の信じられない駅での行動で終わるが、その間火山灰が積もる山脈のシーンが挿入され、形だけの幸福が崩れていく様を、火山灰の崩れにかける映像が何遍も繰り返される。

家庭とそれぞれの人間の幸せとは何か、一人の人間の影響力によって崩れる事で、その本質を観せるのである。

しかし、青年役のテレンス・スタンプがたいして色男でも無いのに、魅力的に観えてくるのが不思議だ。「コレクター」の変態オタク青年と同じ役者とは、とても思えなかった。
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