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すずめの戸締まりのポチのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.9

かなり評価の割れるタイプの作品だと思う

率直に言えば、少し足りないが多い作品
だが、エンタメアニメ映画としての完成度は高いと言える

君の名は、では彗星の衝突
天気の子、では豪雨災害
すずめの戸締り、では地震
を題材に扱っているが今回はテーマや題材が重く現実の事象が癒えていない事からもとてもデリケートな部分を攻めた

序盤のドタバタな展開は相変わらずの新海ワールド
美しい作画と主人公すずめの愛らしさと逞しさは新海監督の真骨頂
突っ込み所は満載だがそれもエンタメとして参加してもらいたいという緩さでもある

地方の過疎化や廃墟問題にも言及しながら、地震による恐怖との戦い、男女の恋模様、ロードムービーとしての突き進む展開は壮大で、アニメ映画だからこそなせる技

少し不親切な部分がある
もっと説明して欲しいところや、ミスリードで猫が悪者になるところがある
そこは想像力を膨らまして寛容に受け止めたい
そこに引っかかったままだと最後までモヤモヤしてしまう

今作は音楽の役割が少ないので
君の名は、での前前前世やスパークルのようなミュージックビデオ的なシーンは少なく疾走感はないかも知れない

しかし、ストーリーに対してある意味音楽に頼らずにセリフと展開で楽しませようとしたのは、監督が自分の脚本に自信が出てきた成果なのかもしれない

椅子の寝相や、愛媛での出会い、覚悟を決めて踏み出す玄関のシーン
もちろんラストの伝えたかった根幹の部分である、すずめが自分と向き合うシーンは涙なしには観れないだろう

被災者、被災者の周りの人、そこから少し離れている人達、色々な見え方がある
9割はエンタメアニメとしてドタバタや美しい表現や突っ込み要素を楽しんで
残りの1割は震災を今1度思い出し、忘れないで欲しい
そんなメッセージを受け取れる

ラストは、すずめの成長と覚悟を感じ自然と涙が込み上げる
いってらっしゃいと、おかえり
そんな当たり前の日常で、すずめの物語は閉じられます

ラストの出会った人達への感謝の行脚シーンは、ある種この作品の全てかも知れません
それこそ1番伝えたい言葉なのかもしれません

追記
多くのことに突っ込みたくなることと
少し説明足りないなって思うこと
音楽少なめだなって思うこと
それも時間が経ってくると不思議と納得のいく解釈が出来ます
直後と何日後かでは感想が変わるタイプかも知れません
震災に対しての距離感で直視出来ない人もいるでしょう
個人的に震災には近い人なのでどうしても地震を題材にされると無条件で苦しくなってしまいます
でも救いはあるので寛容に受け止めたいと思います
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