さるたま

すずめの戸締まりのさるたまのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
5.0
日本に点在する震災地を巡るロードムービー。
新海誠監督が東日本大震災に真っ直ぐ向き合った意欲作。
戸を閉める行為が、人々の営みとリンクしているのに思わずハッとさせられた。
「行ってきます」「行ってらっしゃい」で始まり、「ただいま」「おかえりなさい」で帰結する何でもない日常。しかし自然はある日突然そこに牙を剥く。日常と非日常が戸一枚で繋がっているとしたら、果たして其処に有るのは何だろう。戸をくぐる事で時空を越えられるとしたら、其処に有るのは何だろう。様々なメタファを含みながら、その行為に集約される過程も実に面白い。
美しい景色で魅せて来た新海誠監督だが、本作では今までよりも大きな要素になっていて惹き込まれる。地震とは切り離せないこの国が持つ因果も、自然と共存せざるを得ない人間が抱え続ける因縁。故に、それを越えても生きて行く、生き続けて行くと言う「性(さが)」と「覚悟」が提示されていて心から涙した。
実に見事で本当に素晴らしい作品だった。
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