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すずめの戸締まりのとがぴのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.4
君の名は。から続く近年の新海誠映画を今作で3部作の完結編と位置付ける声も少なからずあるみたいだし、その感覚そのものも分かる一方で前2作のようなボーイミーツガールな恋愛映画の趣は控えめ。

前2作では舞台装置としての役割だった「災害」を今作は全面に押し出してくる。堂々とダイレクトに地震描写は起こるし、何が1番生々しいって地震が起こるその瞬間まで人々は何も知らず、いつもの日常が続いているのをボカす事なく描いてるということ。

地震描写以上にある意味怖いかもしれない。「日常」と突如訪れる「非日常」の使い分けは観る者に確かな印象的なものがあったと思う。

草太さんが椅子になった事により人間よりも身軽にあちこちを飛び越える躍動感はこれまでの新海誠さんの作品には無かった、新たな一面としての顔を覗かせてる。中盤近くの夜の観覧車のシーンは夜景をバックに見せる美しさとそこに見える幻想的な光景、先述のアクション的要素とが特に重なったシーンだったかと。

今作の主人公でありヒロインの鈴芽は前2作以上に驚いたり戸惑ったりする表情が魅力的だったりする。それは彼女にとって今作の出来事がどれだけ「非日常」が多かったかを逆説的に表してる。

そして終盤に込められたメッセージとして不幸を経験してもなお日常は続くし、明日はやってくる、その中で生きて未来は必ずやってくる事を「未来」の鈴芽自身が「過去」の鈴芽に伝える事で「現在」の鈴芽が救われ、これからの糧になる落とし所は実に真っ直ぐなもの。

彼女にとってやがて訪れる明るい未来の象徴として過去の鈴芽の瞳に映る未来(現在)の鈴芽と隣に居る草太さんの一枚絵は鈴芽自身にはどう見えたのだろう。

非常にエネルギーを消耗する作品ではあったけど、寒くなってきた日々の中で草太さんと鈴芽が再会出来たエンドロール後なので、あぁ、きっとあの2人の未来は明るいのだろうという確信が持てました。
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