高井戸三郎

すずめの戸締まりの高井戸三郎のネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「猫」の再来はまだ遠いようだ。

本作では「声」は重ならず、かわりに、幾度かの抱擁と、手を取り合う様が描かれる。
埋められない距離を無にする「声」から、近づき離れ触れ合うことが可能な身体への移行を、孤独で独善的な若年男性の彷徨的空想=セカイから、関係性と相互性と歴史の現実的旅行=世界への更新と言い換えるのであれば、それが近年の数作で新海監督が認知度を大いに向上させた理由となりうるだろうか。

ただ、かつて孤独で独善的で彷徨しがちな若年男性だった者としては、石と化して身を引く以外の「猫」の行く末を見てみたいものだ。

地震を、空から降らせるために、地から立ち昇らせる。
地震がミミズなのはそのためで、さらに、ナマズでなくミミズなのは、おそらく『かえるくん、東京を救う』。

現実に相対した際に、そのような咀嚼をしてみせるのが、表現者というものなのだろう。
高井戸三郎

高井戸三郎