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すずめの戸締まりのpenのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

旅先での出会いを通じて、訪れた一つひとつの場所には日々を生きている多くの人が住んでいること。偶然出会った2者が共に旅をし、絆を深めていくこと。
この2つのどちらを重視するのかで、結局ちょうど良い中間点を見つけられないまま進んでしまった印象が強かった。

これは細かいところだが、最初に出会った同級生の女の子が働いてる姿を見せなかったのはなぜだろう。その場に鈴芽は確かにいなかったが、映像として見せることは可能だったはずでは。2つ目の出会いとの違いを見せたかったのかもしれないが、どんな場所でも色んな仕事をする人がいて、様々なお客さんがいることを見せて欲しかったかも。
土地によって人の生活は成り立ち、人の生活が記憶を作り、記憶は土地に紐付く。その円環を支える土地を鎮める仕事をこの映画は描く。もう少し名もなき登場人物たちの様子を掘り下げても良かったんじゃないだろうか。
ただそうすると鈴芽と草太のような関係の構築を描くのには時間が足りない。つまりどちらを重視するのかという最初の問題に行き着いてしまう。
描きたい想いは分かるが、最終的にどっちつかずになってしまった感じがした。

あとこれは単純な好みだが、地震が起きたりアラートが鳴った直後の人々の様子は描いているが、収まった後の様子をあまり描いてないのが気になった(鈴芽の学校の様子が出てこなくなるとか)。

ロードムービー要素としてはむしろごちゃごちゃと寄せ集まった後半の方が、短時間の中でも楽しくて好きだった。

鈴芽と草太の駅での別れ、今年は『マイブロークンマリコ』の駅での別れの良い演出を観ていたのであまり印象に残らず。
序盤の船に乗るまでの追いかけっこで掛かる軽快な音楽はサンバ・テンペラードを意識してるのだろうか。
声優陣は安定してどれも素晴らしい。

モノローグを抑え、挿入歌の音合わせの編集を止めるなど、新しいことに挑戦しようとする意欲は感じる。省略は武器だと思うので使い続けても良いのでは。
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