ごはん

すずめの戸締まりのごはんのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
5.0
2022年のアニメ映画作品だと間違いなく大本命なので、劇場予告以外の情報は一切シャットダウンで鑑賞。
はじめてグランドシネマサンシャイン池袋の壁のような巨大スクリーンを体験!

ネタバレになるかもしれないけど、緊急地震速報のアラームや災害が描かれるので、そう言った表現が受け入れ難い人は注意したほうが良いかも。


「自然災害の表現」
「君の名は」「天気の子」でも自然災害をそれぞれ違った形で扱っていたけれど、
本作では明確に3.11、東日本大震災を取り扱っている。そのためアラート音が何度も鳴り響くシーンや震災によって無くなった町なんかの描写がしっかりと描かれている。
被災したわけではないが、そういった描写は今でも当時の異様とも思えた事態を思い起こされるし、実際に被災された方の中には傷をえぐられたような気持ちになる人もいるかもしれない。当然そんなのはわかった上で本作を作っているのは、新海誠監督なりの震災への向き合い方、メッセージが強く現れている作品だと思った。
ただし実際の震災直後の問題である原発の問題などには一切触れていないので、明確に東日本の災害を描いた作品としてそこに触れなくて良いのか?というところは少し疑問も残る。
今回触れるのはあくまで自然災害のみという事なのだろう。


「ミミズと閉じ師」
物語の設定上、大震災が起きるのは閉じ師(要石)でミミズを抑えきれなかったからとなるけど、劇中の戦いをみてわかるように常にギリギリでいつ負けてもおかしくない。
つまりは現実の東海トラフがいつきてもおかしくないって状況そのものなんだろうな。
過去の震災を描きつつもこれから起こってしまうかもしれない事に対する警告でもあった作品だった気もする。


「鈴芽と草太」
はじめは運命的な出会いと言えばそれまでだけど、イケメンだからってトントン話進みすぎじゃない?って思ったけど、最後までみるとなるほどね!と。
序盤「前にどこかで会った事ありませんかー?ってこれだとナンパか」みたいなセリフがあるけどこれはこれで大事なセリフでした。

「鈴芽と環」
鈴芽の母代わりとは言え、立派に母としての役目を全うしてきた環さんの独白的場面はサダイジンに操られていた感じもありつつ、本音の一部ではあるわけで、言っちゃった…って悲しさと、それを抱えてたんだなぁって気持ちでなんともやりきれない気持ちになった。
鈴芽は鈴芽で作ってもらったお弁当をちょくちょく持って行き忘れているっぽい様子を見ると、自分なんかにそんな時間割かないで環さんは環さん自身のために時間を使って欲しいって日頃から思ってた事なんだろうなぁ…
どちらも優しい人同士で相手の事思いやれるからこそ、噛み合わなかった部分が辛い告白によって噛み合い動き出した瞬間でもあったシーンだった。


「要石、ダイジン、サダイジンとは…?」
ストーリー的には目的とか含めわかりやすい部類だと思うけど、諸々設定的なものだったり要石であるダイジン、サダイジンってどういう経緯でなったのか?はじめから猫なのか?草太が椅子にされたように人間が猫の姿にされてる?
そのあたりはいまいちわからなかった…
精神世界の海岸にいろんな動物の骨が並んでたのは歴代の要石になった生き物たち??
ダイジンの身体が小さいのとか弱ったりしてるのは、要石=神様的なものに対しての人間の信仰心とかの薄れなのかな?
ダイジン=神に近いものだとは思うけど、気まぐれな感じとか何考えてるかよくわかんない感じが神っぽくてよかった。


「ジブリオマージュ」
こちらも明確にセリフとしても音楽としてもジブリ作品へのオマージュ、むしろ次の宮崎駿ポジションは庵野秀明でも細田守でもなく、新海誠です!くらいのアピールにすら思えるほどの主張。まぁこのあたりも賛否ありそうだけど、私としては劇中わ!あれじゃん!!ってテンション上がって嬉しかったな。

「ミミズ対サダイジン」
終盤の見せ場でもあるであろうシーンで迫力ある演出もできたはずなのに、すずめたちの背景程度で扱われてるのがちょっと残念でした。
新海誠のバトルシーンみたかったよ!サダイジンもかっこいいしさ。


「戸締まり」
扉を閉じる、鍵をするってなんとなく心を閉ざすふさぎ込むようなマイナスのイメージを持っていたけれど、
大切なものが出て行かないようにしっかりと戸締まりしたりする事もできるし、戸締まりする事で出発もできるわけだ。
新しい物事の捉え方を教えてもらえた気がした。



本作は扱う題材が具体的になったぶん、
エンタメ作品として楽しんでいいのか、悩ましいところがあった。でもそう思わせる事自体狙いなのかなという気もする。
もちろんエンタメとして楽しめた人はそれはそれで良いと思う。

ただ3年に1本のペースで映画作品作ってくれる新海誠。
作品の好き嫌いはあれど約束されたような綺麗な背景とクオリティのアニメ作品作ってくれるのは本当に嬉しい限り。

次の新作はまた3年後くらいかな?
またきっと同じように期待してワクワクしながら見に行くんだろうなぁ。楽しみ。
ごはん

ごはん