TaiRa

すずめの戸締まりのTaiRaのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
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新海誠の価値観が濃くなると胃もたれする。

プロットだけ見るとミニシリーズとかにしたほうが納まりが良さそう。日本各地の被災地へ赴き、忘れられた記憶巡りして6話くらいで終わるやつ。そのくらいがちょうど良い。旅しながら扉閉じて行くのが繰り返されるが、画的なフレッシュさもないし、一個一個のエピソードが薄味&事務的に消化されるので全然乗ってこない。新海世代の特徴なのかもしれないけど、映画のBPMが速すぎて場面を作れてない。物語や芝居が情報の羅列になってる。多分ずっとそういう傾向はあるんだろうけど、今回のストーリーとは一番食い合わせが悪い。流れ作業的ロードムービーだもん。あとキャラクターに味がない。演出面ではそれ程見るとこもないけど、新海の自然への考えとか改めてハッキリしたらあんま好きじゃないな。震災後に描かれる救済の寓話としての『君の名は。』や気候変動時代を生きる子供たちへのアジテーションを含んだ『天気の子』には賛同できる部分もあったけど、直接311を描くのに完全なヒューマニズムの視点で語られてもしっくり来ない。人間が地震を止める話って傲慢じゃないかとすら思う。もはや角川春樹的なオカルティズムだし。人類が自然を制御しようとする思想を宮崎駿が漫画版『ナウシカ』でどう描いたかですよ。あと被災者の記憶は必然的にエモーショナルだとしても、主人公たちの行程に思い入れ薄いので彼女らの記憶にはシラケるのって映画としては失敗でしょう。結局『天気の子』で提示したアナーキーな価値観とは矛盾してしまったのが残念。
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