おこのみやき

すずめの戸締まりのおこのみやきのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.3
まず、戦略が非常にはっきりしている。
美麗な映像、映画の顔となる音楽、ところどころにスポンサー会社の商品、店舗(kubota、マック、ローソン等々)。
ただ、そのマーケティングが表面に出すぎていて、肝心のストーリーに集中できないことがあった。

また、想像以上に「中二病感」が強くて恥ずかしくてたまらなかった。
しかし、恥ずかしく感じたのは作中の中二病的な描写だけが原因ではない。
5年ほど前に「星を追う子ども」を観たときのことを思い出す。
「星を追う子ども」のときは「俺たちの宮崎駿への憧れ」を詰め込んだような内容、演出、キャラクターで、共感性羞恥のようなものが私の中に生まれた。(新海誠監督は漫画「風の谷のナウシカ」を愛読書の一つに挙げている)ただ、これは宮崎駿のオマージュと考えれば受け入れられることもなくはない。
「すずめの戸締まり」に関しては、予告で自ら「新海誠の集大成」と言っているように「君たちの(これまでの)新海誠への憧れ」を詰め込んだような作品。
もう何年か経てば受け入れられるのかもしれないが、今の時点では恥ずかしさを感じざるを得ない。

さらに、終盤の主人公すずめのセリフ「未来は明るいよ」というセリフにとても違和感を覚えた。
これが本当に震災や大切な人の死を経験し、閉じ師の仕事を知った彼女の思いなのか。あまりにも安直な言葉に感じてしまう。
「必ずしも未来は明るいとは限らないが、
これまでの記憶と共に生きていく」では?

今作は3部作の最後という位置づけらしいので、新たなことに挑戦する新海誠監督の次回作に期待したい。