西木寸

すずめの戸締まりの西木寸のレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.4
天災をファンタジーへ。新海誠監督のここ何作かの共通要素も、今回は最もシビアな「地震」を扱い、それでいてMV的演出からの脱皮しクオリティがネクストステージへ。

我々のトラウマ的な原体験を、安直にエンタメに消費せず、「生と死の儚さ」、その中の「過去の人と場所に確かにあった温もり」と「未来の人と場所から得られる温もり」の存在を真摯に描いている。

「おかえり」「ただいま」もう言えないこの言葉。常に隣に「死」はいて、突然奪い去る。でも確かに、絶対に、その日々にあった温もりは嘘ではない。

震災をファンタジーに使う拒絶感は確かにあるけど、逃げずに真正面から向き合って、真摯に描くこの映画は、立派だと思う。

核となる場所が「廃墟」である事の設定の妙、戸締まり描写の演出含め活かし方も極めて秀逸だなと。
この映画のテーマ性、つまりは「失われた場所と人の存在」を震災に一手に引き受けさせる事なく、作品を通して感じ取る事ができる。「それはもう無い。だが確かに存在した」
西木寸

西木寸