伊澄

すずめの戸締まりの伊澄のネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

毎回思うことですが、新海誠監督作品を観た後に映画館を出ると、とても世界が綺麗に見える。
そう思わせるだけの映像美と物語がある。
今回のテーマは、特に。

序盤は「高校生なのにそんな立入禁止区域入って家出て外泊してアワワ……」などと、これまた毎度のことですが無粋にも思ったのですが、まぁ序盤にかましてくれただけ後々人前で空飛んだり人様の車半壊になる原因作ったりというよく考えるとメチャクチャな展開も流せるようになりました。笑
それよりも鈴芽が行く先々に会う人の優しさに触れたり、鈴芽が見る「その土地に暮らしていた人々の想い」、そして風景が素晴らしかった。その方が印象に残る作品でした。

もう、環さんと鈴芽が言いあうあのパーキングエリアから泣きっぱなし。笑
こんなに映画で泣いたの久しぶり。
「なんであんな事言ってしまったのか」とサダイジンに乗っ取られて言わされたことですが、そういう口には出さない思いを抱えながら生きている大人。
でもちゃんとその後、「それだけじゃない」って言い合える絆。
タイムカプセルに仕舞われたにっきちょうと、ある日を境に黒塗りにされて、「よく覚えていないんだ」と閉じられた記憶。
常世でその記憶と幼かった自分に向き合って、「本当は分かってた」と受け止める強さ。
本当に力強い物語だった…。

多分、その力強さは鈴芽と鈴芽の母親が、常世であっても終ぞ再会を果たさない徹底さからきてるのかなと思います。
ファンタジーにはある死者との邂逅は今作にはない。
そればかりか弱冠17歳の鈴芽が4歳の鈴芽に語る内容も経験に裏打ちされた重さのある言葉に心打たれちゃいました。
そして最後の戸締り。
あああ、すごくよかったなあ〜〜。

今回は女性性がいやらしさを帯びて出てくることもなく、ちゃんと「当たり前に子ども(高校生である鈴芽)を守る大人たち」が鈴芽の物語に色を付け、そして鈴芽と草太の関係が素晴らしく、鈴芽も良い子だし、ああ〜〜、登場人物もすごくよかった。
二人の生きたいって想いがグッとくる……草太が一度神域に踏み入れたからこそ人間である事を望むあのセリフが出てくるんだよな……。
観られてよかったです。新海誠作品の中で一番好きかも。

あの日から、4歳の子どもが高校生になるまで月日が経ったんだな。
鈴芽が故郷で見た「その土地に暮らしていた人々の想い」が、挨拶だったのがすごく印象的。
何気ない日常の動作を思い返させるのが本当に上手いよなって、思いました。
伊澄

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