Kuuu

すずめの戸締まりのKuuuのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.0
見終わった後、思慮したくなる映画。心になにが残ったのか、その味わいをずっと感じていたくなる。

九州の静かな街におばと住む高校生、鈴芽。災いが訪れる「後ろ戸」という扉を閉めて回る「閉じ師」草太と出会い、鈴芽の旅が始まる、といった内容。

鈴芽が巡る全国各地の風景も、各所で出会う温かい人々との心の通わせも心地よかった、、!

3本足の草太。普通に走るし、そのまま寝るし。めっちゃ上手にバランス取るじゃんって思ったけど笑。特段足を直すわけでもない。
イスは母を失った喪失であり、厄災が起こった印影であり、なかったことにしなくても駆けていけるという証拠。
無理に思い出す必要も、いつまでも背負っていかねばならない訳でもない、あの厄災から距離を取ったって大丈夫。
でも、なかったことにはならないから、いつかは向き合って乗り越えていかねばならない。鈴芽には、その時が来たのだねきっと。

現代社会においてこんなに技術革新が進んでも、天災はコントロールするものではなくそのわずか前に予測できる程度。
みみずも退治する対象ではなく、神々の助けを借りながら祈り、沈めるもの。

ダイジンは小さな子供のよう。鈴芽からの「うちの子になる?」は、ダイジンにとって要石の役割を放棄するほど大きい言葉だった。神としてまだ幼いのかもしれないし、一人でずっと孤独だったのかも。
環さんが鈴芽に投げかけた言葉とリンクしており、鈴芽の言動がいかに重要だったかブーメランとして刺さってくる。

本作は鈴芽以外の過去背景があまり語られない。草太のこれまでの背景や、芹澤と草太の馴れ初めや、環さんと姉の描写など。
環さんだって姉を突如失った遺族。その状況で子供を預かり、育て上げ。環さんだって辛かった。
ウダイジン乗っ取りによって出てきた本音。きつい本音だけど、否定しない環さんであってくれてよかった、「でもそれだけじゃないから」って言ってくれる環さんでよかった。

ラストの「おかえり」は東北で出てきた行ってらっしゃいの数々の対比。言えたはずのおかえりが一瞬で失われた。亡き人々の声も携えて、生きている人々は日々を過ごしていくのだ。

鈴芽は
「死ぬのは怖くない!」
「生きるか死ぬかなんて運!」と随所で発する。
震災を体験した身からすれば、そうなる心情も理解できる。
ただ鈴芽の危うさも強く感じた。
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