佑

すずめの戸締まりの佑のネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

賛否両論ありますが私にとっては良い作品でした。その理由は3点あります。
1点目は震災被害に遭うことについて考えさせられたという点です。いつも地震に慣れてしまってさして怖いとも感じていませんでした。また東日本大震災当時は小学生で様々なメディア映像や体験も覚えていますが、関東に住んでいたこともあり実害は無く近親者にも被害が無かったため震災はショックでしたが悲しみを感じることはありませんでした。それでも思い出すのは嫌なため意識的に当時の資料や映像を見る事を避けていました。しかし今回の作品を一度見たとき、冒頭で船が建物に乗り上げた場面で記憶の蓋が開いた感覚がありました。さらに東京にミミズが落ちそうになった場面、東北での『いってきます』の連鎖の場面を見て自分の身に置き換えて日常が瓦解する恐怖、やるせなさを理解しました。現実ではもちろんミミズはいないし地震を抑えることはできません。しかし地震が奪うものをこの作品によって直視するきっかけができ、心の整理と心構えができたように思います。
2点目は環さんの感情曝露のシーンです。血縁者ではあるが親子ではない子供を引き取るのは綺麗事では済まないと思います。実際、震災後も美談が溢れかえったわけではなく問題は今も燻り続けています。監督が環さんの"愛が重い"部分ばかり描くのでは無く心の奥底に溜まったものを吐き出す場面をつくったことは綺麗事で終わらせないという監督の気合を感じることができたように思います。
3点目は要石やミミズといった表現についてです。私は神を信じない人間であり、前述した通り現実にミミズが存在するとは思っていません。ちなみに神道信者でもありません。保守派・右派でもありません。しかし、今回のモチーフである要石やミミズといった民間信仰・神道に関連するモチーフをすんなりと理解した自分がいました。所謂アニミズムに抵抗がなく神道的なものも分かるところに自分が"日本人"だなと感じました。この場合の"日本人"というのは宗教的モチーフごちゃ混ぜ、根底にアニミズムが流れる日本社会で成長してきた人間という自分なりの解釈です。神の存在を信じていなくても私は日本人なんだなとアイデンティティを自覚することができました。(個人的な解釈ですしナショナリスティックぽいので不快に思った方が居たら申し訳ない)
以上の3点が私がこの映画を良いと思った理由です。あくまで映画の内容のみ書きましたが、OSTも主題歌も最高でした!
佑