るるびっち

すずめの戸締まりのるるびっちのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.2
三作連続で災害がテーマになっている。
東日本大震災から10年間、監督は震災に囚われていた。

扉の向こうの常世の世界は、全ての時間が存在している世界。
大震災以来、時が止まっている人たちへのメッセージであろう。
災害で大切な人を亡くし、時が止まって前に進めていない方もいるだろう。
主人公の鈴芽もその一人。
母を亡くし叔母と暮らしているが、互いに気遣いし過ぎてギクシャクしている。
友人に何かを言いかけ口をつぐんだり、叔母に状況を説明できなかったり、主張を控えるディスコミュニケーションぶりが伺える。
旅で他人と触れ合い、社会性を鍛えられていく。
後半、叔母と共に旅することで関係を深めていく。

三本足の椅子は、心の傷が癒えていないことを表している。
また災害事故による障害へのメタファーでもあろう。
日本ではまだそうした表現は控えられているが、世界的にマイノリティへの配慮がされる時代。
クリエイター意識の高い監督は、そこも織り込んでいるのだろう。
主人公の名前、岩戸鈴芽は天鈿女命からきている。
天岩戸に閉じこもった天照大神を誘い出す、いわば日本が暗闇に覆われた時に光をもたらした神様だ。
鈴芽の行いで、震災で時間が止まり闇に閉じこもった人々や国土に光を呼び込むという願いなのだろう。
「いってらっしゃい」「おかえりなさい」という挨拶が最後にあるが、それは立ち直って日常を取り戻したという証なのだろう。

本作でショックなのは、日本各地の廃墟からミミズという震災を表す穢れが出現することだ。
そして、その廃墟は日本に増えているという。
高度経済成長やバブルが嘘のように、日本は30年の停滞をして凋落を始めている。
人口や産業も減り、今後益々廃墟が増えるだろう。
10年後には、本作が日本全土の廃墟化を予想した予言映画として扱われるかも知れない。
国は増税を検討しているが、繁栄させてから増税しないと縮小して貧困化するだけだ。順番を解っていない。
震災から立ち直り、時間を押し進め光を呼び込む映画なのだが、これが日本の凋落を予言した不吉な映画になる予感がする。

監督は震災の影響で三本映画を作ったのだから、次はコロナの影響による三本を作るだろう。そこでの未来はもっと暗い物になる気がする。財政出動して日本を立て直そうという気概の無い岸田と財務省に見て貰いたいが、暖簾に腕押しだろうな。
自民党という災害で、益々廃墟が増えるね。
るるびっち

るるびっち