バクチャン

すずめの戸締まりのバクチャンのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

震災によりお母さんを亡くし、九州で叔母さんと暮らしている女子高生の鈴芽さんはある日廃墟を探すイケメン・草太と出会う。猫のダイジンのせいで椅子になっちゃった草太の家業を手伝いながら、鈴芽はすんげえことに巻き込まれていく……!みたいな話。

よかった!!めちゃくちゃよかった!!すごくよかった!!よかった!!よか(以下省略)

震災が起きてどえれえことになった時、私は被災地じゃないから特に何かの被害を受けたわけじゃないんですけど、それでも怖くてしんどかったのをまだ覚えてます。日常が全部塗り変わるみたいな感触が嫌で嫌でたまんないのに、周りは「怖がろうが死ぬ時は死ぬんだから」みたいなちょっと諦めムードだったのも嫌だった。

だから最初の方の鈴芽の「死ぬのは怖くない」みたいな発言も「マジで言ってんのかお前ェ!!」になっちゃった。実際、あれは親の死とかから逃避して現実を生きるための強がりというか生活の知恵というか、「死ぬのは時の運だと分かっていれば不安な気持ちを押し込めておける」みたいなもんだと思うんですけどね。

震災に関する諸々のメッセージが「人の絆!」「助け合い!」「かけがえのない日々!」みたいなのもどこか欺瞞を感じてる中で、すずめの戸締まりは震災のお話だよって聞いた時は「え〜?なんか重いテーマ扱ってる〜まあキャラの見た目がかっこよすぎるから観るけど〜」ってちょっと舐め腐ってたのでした。

そんな舐めて見てたのに泣きながら劇場から出てくる体たらく。
だって「命はかりそめ、死は隣、でも一時でもいいからこの日常を長く生きていたいです!」という趣旨のセリフが本当に良かった。震災の時私は思春期で「死ぬのは怖い」って気持ちを吐露することをかっこ悪いと感じていたために、押し込めてきた気持ちがたくさんあったんだろうけど、それが全部言語化されたような気持ち……。そしてこのセリフが新海誠から出てきたってことはきっと私以外にも「震災怖い!死ぬの怖い!いつ死ぬか分からないとかもう分かってるけど、まだ生きてたい!」って思った人間がたくさんいるということだ……としみじみ泣いた。震災から10年以上経って被災者でもない私が言うべきではないのかもしれないけど、共感というか共鳴による絆を感じたのであった。

あと芹澤朋也が良すぎる。
懐メロとスポーツカーと2万借金のおもしれー男。
バクチャン

バクチャン