このレビューはネタバレを含みます
12時5分から昼ごはんを我慢して観た。新海誠作品の絵が、今までの実写のようなリアルな絵から、アニメ感が強い絵に変わった気がする。いつもの劇場と違うからそう感じたのかもしれない。全体的にジブリっぽい雰囲気も感じた。
天気の子を見た時にも感じたことだけど、君の名はと比べるとストーリーに現実感が感じられず、子供っぽい印象を受けた。すずめと草太以外の人がみみずを見えないことがリアルに感じられない理由かもしれない。君の名はでは、三葉と瀧と同じように糸森町の人も東京の人も隕石の落下に気付いていた。扉を閉めるときに呪文のようなものを唱えるところも冷めてしまった。
東日本大地震ですずめの母親が亡くなったとわかって、実際に亡くなった人やその家族を想像したら、生々しくて作品に入り込めない感じがした。隕石の落下の方が幻想的でリアル過ぎないから「君の名は」の方が良かった。
キャラクター、一人一人の掘り下げが少ないと感じた。ダイジンは予告編を見た時から悪いキャラだと思っていたけど、違った。ダイジンがなぜかなめ石だったのか知りたかった。最後に扉を閉めるときにサラッとかなめ石になって?となった。叔母の環(たまき)が感情的になって怒るシーンではサダイジンに操られていると思いきや本音だったようだと分かり、怖くなった。その後すんなり二人が仲直り出来たことにびっくりした。特典でついてきた短編小説を読んで、環が苦労しながらすずめを育て、二人の中に信頼感があるとわかり少しは理解出来るようになった。草太の今までとなぜ戸締りが家業になったかも触れられていなかったので草太が特別な人のように感じられて感情移入しにくかった。
草太が椅子に姿を変えられたりギャグ要素がより強くなった。友人の朋也が聴く曲が古くて、歌があまり上手でないのが面白かった。
音楽も良い曲だけど、RADWIMPSの曲にも慣れてきてしまった。新海誠作品のひとつの山場であるタイムラプスと主題歌の組み合わせのシーンの印象が薄かった。
君の名はと天気の子の登場人物が出てこなかったのは期待していたので残念だった。物語の構成上しかたなかったのかもしれない。
ラストに、OPの夢落ちシーンはずずめが震災の時に未来の自分に会った記憶だとわかった。宮崎に帰った後、すずめは環に何を話したのだろう。現実にもすずめのように震災で親を失って故郷を離れた人が居るかもしれない。そういう人はこの映画を観てどう感じるのだろう。すずめの父親がどうしているか気になった。主人公より年上になったことに自分の成長や時間が経つことの早さを感じた。
他の人のレビュー、考察を見て
キャラクターの掘り下げが甘く感じたけれど、セリフ以外の表情や自然描写から推測できることがあると知った。何度か出てきた蝶は登場人物が失った人の比喩だったよう。
双子の母親のルミの登場シーンではオスの蝶が出てきて、それはルミの夫を表しているかもしれないと知った。すすめが夢から覚めるシーンと最後に幼い自分に声をかけるシーンで出てくる二羽の蝶はすずめの両親を表しているかもしれないとも知った。
こういう描写から色々想像するのが新海誠作品の魅力なのだと気付けた。他にも、芹沢が草太の家に来るシーンで小さく聞こえるサイレンは近くの病院に入院している草太の祖父が病院から出てミミズを抑えようとしていることを示していると知った。その後の看護師のセリフからも推測できるよう。
ダイジンの名前の由来は大地震から死を抜いた名前だと知った。ダイジンとサダイジンが草太の両親という考察が興味深かった。自分はすずめの両親かもしれないと思った。ダイジンはすずめの母親であるから、自分が作った椅子に草太を化けさせれたとしたら話の筋が通る気がする。そうだとしたら、椅子に姿を変えられたことにはギャグ的でなく深い理由があったことになる
子供っぽい映画だと感じていたけれど、深いメッセージが込められていたと分かった。福島での芹沢とすずめのセリフから震災の当事者とそうでない人の感覚の違いが描かれている。それは、現実世界でも同じなのかも知れない。作中でかなめ石がこの世から無くなってしまったことは、現実世界でいつ大地震が起きてもおかしくないことを暗示しているのかも知れない。