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すずめの戸締まりのstaysweetのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
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君の名はと天気の子よりは見やすかった。
どれも一定水準を満たしていることには変わらないけど、すずめは全二作よりは年端も行かないメインキャラの境遇のどうにもならなさが比較的低かったのと、よりエンタメ感があったから。

それでも逆境に置くのと、どこかしらセカイ系なのは変わらんのよなあ。
(ちょっとネタバレ要素入ってくかも)
震災も重い。空気を重くするわりには、深く納得する背景というより装置のようにも感じられてしまう(ギミックとして回想は薄くあるが、経験から地震にトラウマがあるとかでもない)。そう、いろんなものがちゃんとしたクオリティなんだけどどうにも溶け合いきってない感覚を受ける。CG、音楽、その使いどころ。話も技術もパズルとしてはちゃんとはまって機能してるんだけども…なんかガタガタチグハグする。
冒頭にかっこよさげにかっ飛ばすジャズがあったけど、オイオイ突然だな?そういう使い方あるけどさ?今回はジャズ取り入れてくの?と思ったら感じられたのはそこ一回だけだった。浮いてる。CGもシーンによって同じものを違う描き方を使っているのが逆効果に感じられた。使い所もとりあえずスケールのでかいものに使ってるって感じで、迫力はあるけどイマイチ馴染んでない。亜空間の氷?の表現こそ使うべきだったのでは??全部いい感じに馴染ませてマスタリングしてほしい…キャラの主線の書き方から見直してもいいんじゃないのかなあー

あとは(グチばっかりみたくなってるな)雑なところがいろいろと目についてしまった。椅子の運動能力…飛び方やその距離なんかが安易だし、古いはずの本はボロくもないしなかなか良い発色。歴史の見せ所なのに!言うたら椅子の脚もすぐ取れてしまう作りに見える。定評のある空も、冒頭の無数に輝く星があるところではその動き方が手が届きそうすぎてリアル感がなく…こだわるところはこだわるけど、その他はおざなりなんだろうか。看護師志望のすずめが割と読書家なのは?本棚にわざわざはつ恋など並べたのは単にタイトルを借りただけなのか。もっとも、一部の歌詞だけを拾っただけっぽい懐メロの選曲はアリだと思う。現実でも、たまたま流れているのは心情とかけ離れた歌だったりするものだから。

ドラえもんやジブリは別の文化圏があるといったテイでそことコネクトしていくが、新海作品は日常の解釈だったり、ボーイミーツガールの片方が特殊な属性を持っていたら?どまり、それを主役男女の2人の視点を通してしか描かないので、世界観やその描写といった意味では広がりに欠ける。きっとそれなりに設定は作り込んでいるのだろうから、それが見えないのは物足りないかも。
おとぎ話要素はあるけど軸足が現代だからそこまではファンタジー感覚にはならない。ので、その世界観の説得力と言うよりは日本アニメのお約束の力を借りているところがある。椅子のキャラ立ても、ロリコンで許されるのも、恋に落ちるのも、キスの解錠も。今回は男側の年齢が多少上がったので幼い男女の危うさが回避出来たが、そいつがあの状況で彼女に頼らざるを得ないのはまあしょうがないとしてそんなズブズブ行きますかね…そこは逆に幼い方が突っ走りがちなので納得出来てしまうとこはある。

パズルはうまくハマって物語として成立している。なんならビジネス的(プロダクトプレイスメント的な)にもうまく組み込んだのだろう。まとめ上げられてはいるけど、とりこぼさないようにしてあるだけで…うーん、全体としてはちゃんと芋煮なんだけど、ときどき変な具や生煮えのものが混じってる感じ?渾然一体に溶け合ってひとつになってる、って感じではないかな…あの里芋おいしかったなーとかは思い出せるけど、いざもう一度味わおうとしたらやっぱり変な顔になっちゃうとこがあると思う。そんなモヤモヤがこの中途半端な長さに出てしまったわ。
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