み

すずめの戸締まりのみのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.8
アニメキャラの利他的行動。
行動における結果に求めるものは幸福で、対象がアニメキャラで、感情が語られなくても、与えられたもので”この行動は幸福を求めている”というのを前提に、その対象の行動の結果”なにが”幸福になるのか。そこだけは考えてもいい。その行動を否定的に見るのはナンセンスだと思う。
幸福の否定になり、それは許されるものではないと思う。キャラクターの利他的行動は感情で解体するべきではない。

悪役としての立ち位置のキャラクターの行動も幸福を求め、それを食い止めるヒーローもまた幸福を求めている。
そう考えると、善悪の問題って難しいよね。

人に与えられた”限られた時間”を有意義に過ごすことで価値が付くのが人生である。
人間の行動は「人生の価値」の話であって、自分の人生より他人や世界の為。
それが有意義と捉えたのであれば価値のある人生になり、価値を感じていなかった人生も満たされるのであればそれでいいよね。

この作品は最初何も説明がなく、本当に分かりづらい作品だなって思った。
すずめだけ見えるミミズや、なぜイケメンに惹かれたのかみたいなそういうところ。
観終わって思ったのは、これは”作品全体を通して説明”になっていたのか、ということ。だから常に問題提起があって飽きないんだよね。
私達が生きている世界線にも存在する”地震”というリアリティとファンタジーの絶妙なバランスが気持ちよかった。

この作品が一番伝えたかったのは、人との繋がりの大切さみたいなものだと思った。
インターネットにおける情報共有がなければ、泊めてくれる人達がいなければ、あの懐メロ喫煙者がいなければ。
そしてオチを考えるとやっぱり人っていうものは大切だ。
そう考えると、地震を扱ったのは普通に正解だと思う。
当時を経験しているのでわかるんですが、あの頃は本当に人の繋がりに感動するばかりだった。

家から出て家に帰る。
それって当たり前だけれど、当たり前がどれだけ幸せなことか気づくのは難しいよね。
作品全体を通して当たり前に価値を与えていてとてもよかった。

一つだけ疑問に思ったことがある。
それは301号室のアパートの鍵を最初閉めなかったこと。
いままで徹底していた鍵を閉めるという行為をあえてしなかったのは必ず意味があるんだけれど、そこだけはどうしても分からなかった。

母親との回想シーンで、椅子だけ色づいていたので、母親は白黒で曖昧なものでしか覚えていないのかなって思ってたから、その後の演出で椅子と母親と紐づいて、そこのシーンもきちんと意味があっていい。

この作品印象に残ったシーンがあまりにも少ないんだよね。シーンを切り取ると美しいとかはあるけれど。
それが逆に人生っぽいし、伝えたかったんじゃないかなって思ったテーマも活きている気がした。

泣ける作品がいいってわけじゃないけれど、全く泣けなかったのはびっくりした。
圧巻という意味合いの感動はあったんだけれど、泣く気満々で行ったので拍子抜けした。
それでもありがとう、新海誠と思ったし私はこれからもこの人についていくよ。
み