芸術家が己の馬鹿げた信念や世界を具現化することに取り憑かれた存在だとするなら、新海誠は間違いなく芸術家だろう。ここまで裸になれる人間は中々いない。しかも、作品を積むにつれて、見るに耐えない変態さは削れ、一方、凡庸な方法で社会の暗部に触れる大胆さは磨かれているので、彼の映画着実に良くなっている。ただ映画の構成に明らかな問題がある。最初の展開の唐突さには白けるばかりだった。自転車で男とすれ違うシーンと、急ぐすずめが自転車を漕いで坂道登るシーンの作画の酷さが序盤の酷さに拍車をかけるが、後半につれて作画は改善されつつあった。日本映画界に再び暗黒期をもたらそうと画策する川村元気は、せめて新海誠に時間とお金を渡すべきである。
